DXで進むシステム内製化の動き|メリット・デメリットと課題

公開日:2021/09/01 最終更新日:2023/08/09

DXで進むシステム内製化の動き|メリット・デメリットと課題

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これまで多くの日本企業は、自社システムの開発やその運用・保守を委託して、ベンダー(SIer)に任せっきりの状態でした。それが近年、ユーザー企業においても自社でシステム開発や保守・運用をしようという「システム内製化」の動きが急速に進んでいるように思います。

 

本記事では、システム内製化が進む背景や内製化することでのメリット・デメリットを簡単に紹介します。ひとえに「システム内製化」といっても、社内システムの管理・運用すべてを内製しようという動きはほんの一部です。詳しくは後述しますが、システム内製化を前向きに検討する際にもクリアしなければならない課題は多く、それぞれの企業ごとに合理的に内製範囲(あるいは外注範囲)を検討していくことが重要です。

INDEX

1. システムの内製化(インハウス化)とは?
2. システム内製化の検討がすすむワケ
3. システム内製化のメリット・デメリット
 - 内製化のメリット
 ・システムのブラックボックス化の防止
 ・ナレッジ、ノウハウの蓄積ができる
 ・開発スピードの向上
 ・効率的かつ柔軟にシステムを開発できる
 - 内製化のデメリット
 ・開発品質を維持することが難しい
 ・大規模な開発への対応が困難
 ・ITエンジニアの採用が困難
 ・離職リスクがある
4. 完全な内製化は困難?準委任契約が突破口となるか…
5. まとめ

システムの内製化(インハウス化)とは?

システムの内製化とは、自社で使用している社内システム(顧客管理システム、在庫管理システムなど)や自社サービスとして提供しているアプリケーションといったITシステムの開発、運用をITベンダー(SIer)に外注せずに、自社内で行うことです。

システム内製化の検討がすすむワケ

これまで多くの日本企業は社内システムや自社サービスの開発、保守・運用をITベンダー(SIer)に任せっきりとなっていました。2000年頃から社内で専属の人材を抱えるよりも、アウトソースすることでコスト削減や業務品質の担保ができるということで、多くの企業が外注する方向へと動きました。

 

しかし、近年ではビジネス環境の変化が激しく、特にAmazonやUberなどDX(デジタル・トランスフォーメーション *1)により既存市場を破壊する勢いで事業を展開する企業も少なくありません。そうした変化に対応していくために、多くの企業がデジタル領域でのビジネスモデルの変革を急ピッチで検討しています。

 

また、当初はアウトソースすることによりコスト削減や業務品質の担保が実現していましたが、そのうち外注先へ「依存」する傾向が強くなってしまい、軽微なシステム改修でもベンダーに依頼しなければならないケースも一般化し、コスト増大やベンダーとの調整工数を要するなど開発スピード面でも課題感が増してきています。

 

*1 参考:「DXとは?|推進するために取り組むべき課題

システム内製化のメリット・デメリット

上記の通り、現在の課題感からシステム内製化を検討するムードが高まっています。この章ではシステム内製化のメリットとデメリットをそれぞれまとめます。検討に当たっては、特にデメリットについて、それに見合うだけのベネフィットが得られるかどうかを慎重に考える必要があるでしょう。

 

|システム内製化のメリット

 

・システムのブラックボックス化の防止

 

ITベンダー(SIer)にシステム開発を外注していると、自社のシステムであっても誰もその中身を把握できていない、といったことが頻発します。システム内製化により、自社システムのブラックボックス化を防止することにつながります。

 

・ナレッジ、ノウハウの蓄積ができる

 

システムのブラックボックス化を防止するとともに、自社内でシステムの運用や開発を進めることで、開発ナレッジやノウハウの蓄積が期待できます。あわせて、自社内でITエンジニアを育成する土壌が出来上がるので、IT人材の育成にも繋がります。

 

・開発スピードの向上

 

ITベンダー(SIer)への開発依頼は少なくない工数がかかります。サービス開発や新規事業開発の場合は、企画意図やビジネス背景、実現したい機能…など、挙げていけばキリがありませんが、これらを正確にITベンダーに理解してもらうことが必要です。また業務システムでも、自社の業務内容をしっかりと伝達しなければ、イメージ通りのシステムができあがらず、結果システムの修正をしなければならなくなるなど、コミュニケーション工数が大きくのしかかります。

また、ITベンダーに外注する場合、リソース問題などベンダー側でなかなかプロジェクトが進まないケースもあります。また、請負契約が主流の国内の開発事情を鑑みると、仕様変更のたびに契約変更や追加契約などが必要になるなど、事務手続きの面でも不都合が起きることが考えられます。特にビジネスのスピードが早い現代において、開発スピードや柔軟な仕様変更がより重要性を増す中で、こうした事情は大きな問題となります。

しかし、内製化していることで、社内からの要望に対し、エンジニアが即時対応できるようになります。また、システムの内容と社内の状況、双方をよく理解したエンジニアが対応することになるので、外注する以上に効率的に開発を進めることが期待できるでしょう。

 

・効率的かつ柔軟にシステムを開発できる

 

システムを内製で開発できると、自社の業務プロセスが変更されても、都度システムに適応することができます。上述の内容とも重なりますが、外注する場合だとITベンダーに開発スケジュールを左右されることもありますが、社内エンジニアがいることですぐに開発を進めることができますし、途中の仕様変更も大きな障害にはなりにくいです。

また、自社の業務は社内の人材が最もよく理解しています。そのため、システム化するべき業務の切り分けや、その業務内容をしっかりと把握した社内エンジニアが開発することができることも良いポイントです。

 

|システム内製化のデメリット

 

・開発品質を維持することが難しい

 

ITベンダー(SIer)はシステム開発のあらゆる技術領域に通じた人材を抱えています。また、各社で設けている品質基準をクリアした上で納品をすることがほとんどかと思いますので、一定の品質が担保されていると言えるでしょう。

そうした企業に外注することに比べると、自社内のITエンジニアは技術面はもちろん実績・経験面が不足することが考えられます。また、自社内での開発ということで、品質基準が曖昧になってしまうと、結果として開発の品質に影響することも想定する必要があるでしょう。

 

・大規模な開発への対応が困難

 

内製での開発チームを構築することで、小規模な開発であれば柔軟な対応が実現できるようになりますが、大規模な開発になると開発リソースが不足し、結局外部の力を借りることになることが想定されます。

例えば、国内でも大きな課題となっているレガシーシステム(*2)のモダナイゼーション(マイグレーション)なども多くのITエンジニアを必要とします。

かえって、レガシーシステムに小規模な改修を繰り返すことで、そこからの脱却を阻害する要因となるリスクもあるかもしれません。

 

*2 参考:「「レガシーシステム」からの脱却|現状の課題と成功のポイントとは?

 

・ITエンジニアの採用が困難

 

国内のITエンジニアは非常に不足しているので、人材確保が困難です。経済産業省によると2030年までに79万人のITエンジニアが不足するというシナリオが提示されています。(2030年問題 *3)

また、社内教育も考えると、人材採用・育成にはある程度のコストがかかってくることを見込んでおく必要があります。

最近では、国内の逼迫したリソース状況から、海外のエンジニアを採用する動きも急速に進んでいます。

 

*3 参考:「IT人材を確保するためには?!IT人材不足の現状と今後の見込みも解説

 

・離職リスクがある

 

内製化した場合、開発したシステムの保守・運用を自社内で実施することが一般的です。何かあった際にも自社内で改修やテスト検証を行うことになりますが、そのため属人化が進むとやはりシステムのブラックボックス化に繋がります。システム担当者の離職があっても問題がないように、しっかりとシステムに関するナレッジを共有する仕組みを社内に確立しておくリスクヘッジが重要です。

完全な内製化は困難?準委任契約が突破口となるか…

自社の開発をすべて内製化することは大企業はともかく、中小企業ではかなりハードルが高いです。それは上述の通り、ITエンジニアの採用が困難であることが大きな課題となるからです。

 

完全な内製化を目指す場合、現時点で不足している技術やノウハウをもつITエンジニアを外部から採用する必要があります。ただし、ITエンジニアのリソースが逼迫している日本市場においては、かなり良い条件を提示しなければ、優秀なIT人材を新たに採用することは難しいでしょう。また、採用できたとしても、教育にかかるコストと時間も念頭におく必要があります。

 

これらを考えた時に、内製化を検討する大きな要因である、「ビジネス環境の変化が激しい市場への対応」が実現できるでしょうか?

 

そこで検討すべき可能性が、「準委任契約」での開発パートナーシップの構築です。特に海外へのIT開発アウトソースであるオフショア開発においては、「ラボ契約(ラボ型開発 *4)」として、多くのITベンダーが準委任契約の提案をしています。この準委任契約では、自社専属の開発チームを外部に抱えるようなイメージです。《人員×作業期間》での契約が主となるため、成果物に縛られることがなく突発的な開発への対応や途中の仕様変更にも柔軟に対応が可能です。また、契約で定められたITエンジニアは自社の開発以外の作業を行うこともないので、社内エンジニアと同様に活用していくことができます。

 

ITベンダーへの丸投げとなってしまうのは、日本の開発現場で「請負契約」での外注することが一般的であることがよく言われます。外注にあたっては、ウォータフォール型でITベンダーと要件定義を行い、中長期的なスパンで開発を実施するものです。そうなると、プロジェクトの立ち上げにも時間がかかりますし、プロジェクト初期に定めた要件定義から外れる仕様変更に柔軟に対応することが困難でしょう。

 

今求められているのは、変化が激しい市場についていくためのアジャイル開発です。短期でのリリースや改修、柔軟な仕様変更していくことがより重要性を増しています。

 

優秀なITエンジニアを過不足なく自社内で確保できていることが理想かもしれませんが、日本国内の現状ではなかなか厳しいといえます。そこで、コーディングやテスティングまで開発工程を網羅的に人員を確保するのではなく、企画や基本設計といった上流工程やプロジェクトマネジメントができる人材だけでも確実に採用・育成し、外部パートナーとうまく連携しながらプロジェクトを進めていくことが突破口となるのではないのでしょうか。内製化率100%を目指すのではなく、内製化率を高めるような視点も必要かと思います。

 

*4 参考:「ラボ型開発(ラボ契約・ODC)とは?メリットデメリットと請負契約との違い

まとめ

システムを内製化する動きは、ここ数年では大企業を中心に顕著になっているように思います。ただし、すべての企業が内製化を推進していけるかどうか、あるいは内製化を推進するべきかどうかはケースバイケースといえるでしょう。いずれにしても、現在のビジネス環境においてデジタル領域のインパクトは非常に大きいものです。企業によっては、内製化を推進することが課題解決につながることもあるかと思います。

 

しかし、日本国内ではITエンジニアのリソースが逼迫しているという大きな課題があります。

本テキスト中でかるく紹介しましたが、最近は不足するITリソース問題を海外と連携することで解決しようという動きが広がっています。

いわゆるオフショア開発になりますが、多くのオフショア開発企業が「準委任契約(ラボ契約;ラボ型開発)」という形で、ITリソースが不足する日本企業に向けて、専属の開発チームを提供しています。

 

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オフショア開発.com 編集部

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