中国のオフショア開発が転換期を迎えている。日本国内の深刻なITエンジニア不足を背景にオフショア開発需要の増加を見込むが、中国側(受注側)では急激な為替レートの変動と人件費の高騰が進行中。案件の数は多いものの、利益の捻出が困難という不健全な状況に陥っている。開発コスト削減を主な目的とするオフショア開発はもはや中国オフショア開発では成り立たない。発注側と受注側がWin-Winの関係を構築するためには、コスト削減という固定観念を取っ払い、一定の値上げ要請に応じつつ、柔軟にIT人材を確保するための“リソースセンター”の位置づけでオフショア開発を利用していくことが今後求められる。
日本国内のIT技術者不足は顕著である。みずほ銀行や日本郵政グループのシステム刷新、マイナンバー(社会保障・税番号)制度のシステム構築、日本取引所グループの次期デリバティブ売買システムの開発など、大規模システム案件が続いていることが背景にある(2015年問題)。2020年の東京五輪に向けたシステム開発特需もある。情報処理推進機構(IPA)の「IT人材白書2014」によると、量的にIT人材が「大幅に不足している」「やや不足している」と感じているIT企業は、過去5年間で最高の82.2%。大規模システム案件は、2015~17年にかけてピークを迎えるものが多く、今後ますますIT技術者不足が深刻化する。最大で30万人程度が不足するとの見方もあるという。
しかしIT企業(SIerやベンダー)は、自前で大量のIT技術者を確保することはできない。特需が落ち着けば、2020年以降は反動で案件数が急激に落ち込む可能性が高いからである。そこで、日本で賄えない分を、中国の対日オフショア開発会社へ発注して緩和する動きが顕在化してきている。
もちろんオフショア開発は中国だけではない。最近人気が出てきているベトナムをはじめ、インド、フィリピン、ミャンマー、バングラデシュなどもオフショア開発先として検討し、実際発注している企業も増加してきている。そんな中、中国オフショア開発だけが苦戦を強いられているのは事実である。