対日オフショア開発の市場環境が悪化している。中国は年々単価が上がり続けており、日本と同等かそれ以上の金額になりつつあるという。また、親日感情的な影響も少なからずあるようで、オフショア開発市場では中国は逆風にさらされている。中国のオフショア開発会社にとって、この逆境を克服するための対策は不可欠だ。富士通グループの南京富士通南大軟件技術は、社内体制の強化と事業の広域化によって、持続的な成長を遂げようと模索している。
約1340人の従業員を抱える南京富士通は、プラットフォーム製品やミドルウェア、業務アプリケーション、車載の組み込みシステムなど、主に製品開発のソフトウェア案件を手がけている。現状、富士通グループ向けのオフショア開発が全体量の9割程度を占める。
ここ数年の人件費高騰と円安の影響で、対日オフショア開発の市場環境は厳しいが、南京富士通では、2009年から対策を講じている。社内体制面では、江蘇省江陰市の市政府と連携して、ソフトウェア検証センターを設置し、ここで現地短期大学のIT人材を在学中に育成して、卒業後に南京富士通の江陰支社で採用。人件費が安い地方都市のIT人材を、即戦力として活用できる体制を整備した。すでに江陰支社は約140人の規模に拡大している。
事業範囲の広域化にも積極的に取り組んでいる。南京富士通はこれまで、富士通のソフトウェア部門を大口顧客としてきたが、現在は受注量が増えている状況ではない。そこで今後は、富士通グループの他部門に対する営業を強化。中村・副董事長兼総経理は、「富士通グループは“ヒューマンセントリック”を掲げている。未来医療や教育イノベーション、モビリティなどを手がける部門から案件を請け負いたい」との意欲を示す。