日本のオフショア開発案件の約8割は、中国に発注されている。しかし、人件費の高騰や日中政治摩擦などによって、現在、中国の対日オフショア開発市場は停滞気味。とくに上海や北京、大連などの沿岸部の主要都市では、日本の地方都市に迫る勢いで人件費が高騰し、オフィス賃貸料も上昇。円安元高と相まって、円ベースのオフショア開発案件では収益を捻出しづらい構図になっている。中国の主要都市で対日オフショア開発を手がける日系ソフト開発会社の間には、悲観的なムードが漂っているという。
一方、中国の内陸部でソフト開発を手がける日系IT企業は、対日オフショア開発の動向をそれほど悲観的に捉えていない。それは、ニアショア開発があるからだという。武漢の日系ソフト開発企業は、「今後も引き続き、コスト安を強みに、コーディングなどの下流工程の開発案件に専念する。日本ではなく、上海など、大都市からの案件の獲得に力を入れる」と語った。
人件費の上昇は内陸部でも避けられないが、今後も沿岸部の主要都市よりは低コスト。主要都市のソフトウェア開発会社からのニアショア開発案件受注が期待できる。同じ中国から請け負う案件なら、為替の影響もなく、また、日系ITベンダーが中国国内向けのビジネスを拡大していけば、対日オフショア開発を除いた現地向けのソフト開発案件にも望みが出る。中国の日系ソフト開発会社の生き残るすべとして、中国に国内におけるニアショアベンダーという道があるという。