公開日:2022/10/13 最終更新日:2023/08/14
DAO(分散型自律組織)とは?将来性や仕組みを事例を通してわかりやすく紹介
近年、Web3.0への注目度が急激に高まっており、Web3.0の中心的な存在とも言えるブロックチェーンと親和性の高いメタバースやNFTといったさまざまな新しい技術や概念にも注目が集まっています。
今回はWeb3.0に関連する注目ワードの一つでもある「DAO」について理解を深めていきましょう。「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」とはWeb3.0における概念であり、日本語では「分散型自律組織」と訳される言葉です。
DAOとは何か、将来性や仕組みなどの基礎知識から、事例やトレンドの情報を交え、わかりやすく解説します。
INDEX
1. DAO(分散型自律組織)とは?
2. DAOの将来性
3. DAOの仕組み
4. なぜDAOが必要とされるのか
5. DAOのリスクや今後の課題
6. DAOの事例
DAO(分散型自律組織)とは?
冒頭でも触れましたが、はじめにDAOとはどういったものなのかを解説していきます。
|DAOとは?
DAOとは「Decentralized Autonomous Organization」の略であり、日本語に訳すと「分散型自律組織」となります。読み方は「ダオ」。「DAC(Decentralized Autonomous Corporation)」と呼ばれることもあるようです。
DAOはブロックチェーンに基づいて一定のルールに従って運営される組織形態の一つであり、その名からもわかるように「リーダーによって管理される中央集権型の組織ではなく、メンバー全員が平等な立場で運営される透明性の高い組織」のことです。基本的には参加者は匿名で、インターネット上で組織されるのが一般的です。
さまざまな事業やプロジェクトごとにDAOは存在しており、もっとも有名なのがビットコインのプロジェクト。ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモト氏が離脱した今も、DAOによって運営されています。
DAOは基本的に誰でも参加できる組織であり、前述したとおり、匿名で参加するのが一般的です。DAOにおいて行われる取引はすべてオープンソースであるブロックチェーンに記録されており、スマートコントラクトについても誰もが閲覧できるため、組織がどのように運営されているのかが見えやすく、透明性が高いのが大きな特徴です。
スマートコントラクトとは、ブロックチェーンにおける取引ルールの呼び名であり、あらかじめ設定されたルールに基づいて取引の実行を自動で行うプログラムのことです。
|Web3.0とは?
ここで、すでにご存知かもしれませんがDAOやブロックチェーンともかかわりの深い「Web3.0」についても改めて確認しておきましょう。
「Web3.0」はWeb1.0、Web2.0に続く概念として、イーサリアムの共同設立者でもあるイギリスのコンピューター科学者ギャビン・ウッドによって提唱されました。
Web1.0、Web2.0、Web3.0はいずれもWebの歴史における期間を指す言葉であり、Web1.0は静的なWebページによって構成されるWebサイトが一般的であった1991年から2004年までを指し、Web2.0はSNSやブログ、ウィキペディアなどのユーザーがコンテンツを作ることが一般的になった2004年から現在まで続いている期間のことです。つまり、Web3.0はこれから来るWebの新しい時代を指す言葉なのです。
「Web3.0」は「Web3」と呼ばれることがあり、同じ意味として扱われることも多いようですが、厳密にはこの2つは異なるものです。本来は「Web3.0」と呼ばれるのはイギリスの計算機科学者であるティム・バーナーズ=リーが1999年に提唱したセマンテック・ウェブを構成要素とした概念のことであり、「Web3」はギャビン・ウッドが提唱した「ブロックチェーンに基づく分散型オンラインエコシステム」を指す言葉なのだとか。
ちなみに「Web3.0」は「ウェブサンテンゴ」と読むのに対し、「Web3」は「ウェブスリー」と読みます。
セマンテック・ウェブとはWebの詳細な意味を扱うことによってWebの利便性を大きく向上させるプロジェクトであり、近年ではGoogleの検索における特殊機能にも応用されているようです。
Web3の構想にはWeb3.0の構成要素であるセマンテック・ウェブに関連するアイディアが含まれていることもあり、この2つの概念は混同されることが非常に多く、同じ意味として扱うメディアも少なくありません。新しい概念であるために定義がしっかり定まっていないことも要因のようです。
いずれにせよ、どちらも新しいWebの時代を表す概念である、と理解しておけば間違いはありません。
|ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンについては以前にも解説したことがありますが、ここでも簡潔に説明しておきます。
ブロックチェーンとは改ざんされにくい仕組みを利用して記録を残す技術のことであり、ビットコインに活用されたことで広く知られるようになりました。
取引履歴をチェーンのようにつなぎ、それぞれの鍵が直前の履歴から発行されるという仕組みのため、一部を書き換えるというのがとても困難になる技術です。
詳しくは、以前ブロックチェーンについて解説した下記の記事をご一読ください。
DAOの将来性
大きな注目を集めるDAOですが、その将来性はどのように考えられているのでしょうか。この項ではDAOのトレンドや市場規模、ビジネスとしての将来性を解説します。
|DAOのトレンドや市場規模
DAOの組織数と総資産額は2021年には前年に比べて20倍と急増しており、参加者数も前年の120倍という驚異的な増加率を叩き出しています。市場規模は前年に比べ40倍になりました。
DAOと関連性の深いブロックチェーンやNFTに関連するスタートアップ企業の資金調達額も増え続けており、多くの企業がこれらの技術をさまざまな産業へと応用することを目的に参入しているようです。
日本においてはそもそも暗号資産の採用率が世界的に見て低いことなどからもわかるように、ブロックチェーンに関する分野については他国に比べて遅れをとっている状況です。とはいえ、ブロックチェーンエンジニアの求人は報酬も高額な傾向にあり、日本国内でも大きな需要があることが見て取れます。
|DAOのビジネスとしての将来性
DAOには今後も注目が集まると考えられており、結果、さまざまなDAOに投資が集まり、多くの資金が得られ、さらに新たなDAOが誕生する、という好循環が生まれることが予想されています。
DAOという組織形態は非常に透明性が高いため、寄付金を募るプロジェクトなどとも親和性が高いと言われており、今後はNPO法人などに代わってさまざまなプロジェクトを行なっていくのでは?とも言われているようです。
株式会社がDAOへと置き換わる未来、というのもあながち幻想ではないかもしれません。
現時点でDAOの市場規模は今後もさらに成長すると考えられており、ビジネスとしての将来性は非常に明るいものであると言えるでしょう。
DAOの仕組み
この項ではDAOの仕組みについてさらに詳しく解説していきますが、はじめにDAOの意思決定にかかわる重要な存在「ガバナンストークン」について説明します。
|DAOの意思決定にかかわる「ガバナンストークン」
DAOは「ブロックチェーン」や「スマートコントラクト」によって透明性が保たれ、「ガバナンストークン」によって新しい民主主義を実現できる組織形態であると言われています。
DAOにおいて新しいルールを作ったり改定したりする必要が生じた場合には参加者の投票によって決定されますが、この投票を行うには「ガバナンストークン」が必要です。「ガバナンストークン」とはDAO独自のトークンであり、これを持つ者には投票権が与えられます。このガバナンストークンはDAOによって購入することができたり、貢献度によって与えられたりと獲得方法が異なるようです。
また、「ガバナンストークン」の所有者は投票に参加できるだけでなく運営に関するさまざまな提案を行うことも可能です。
では、ここからはDAOの仕組みについて確認していきましょう。
|DAOの仕組み
DAOは「ルールの構築」「資金調達」「運営」という3つの要素で成り立っている仕組みです。
DAOにおいて重要なスマートコントラクトを実施するにはルールの構築が必要不可欠であり、まずはルールの定義を設定することが重要です。
ルールが定まったら、ガバナンストークンの発行によって資金調達を行います。その後、ガバナンストークンを有するメンバーによって運営が行われていきます。
|DAOによって実現できること
では、DAOによってどのようなことが実現できるのでしょうか。
先述したとおり、DAOにおいて行われる取引はすべてオープンソースであるブロックチェーンに記録されています。誰もがスマートコントラクトを閲覧できるため、組織がどのように運営されているのかが見えやすく、高い透明性を保つことができるようになっています。透明性が高いということは不正が行われる可能性が低いということでもあり、組織の健全さを保つことにもつながります。
自律的に運営される組織であり、匿名参加が可能であることから、性別や国籍による差別なども生じにくいでしょう。本当の意味でダイバーシティを実現できる組織形態であるとも言えるかもしれません。インターネット上で世界中にいるさまざまな人々を組織できる仕組みであるため、これまでにないプロジェクトの実現にも期待が持てます。
DAOを法人とするには世界各国で法律の整備が必要となりますが、今後法人化が認められれば、株式会社に代わるものになるとも言われています。
なぜDAOが必要とされるのか
DAOはその特徴や仕組みがそのままメリットとなるため、これまでに解説してきた内容とも重複しますが、この項ではDAOのメリットについて理解しておきましょう。
DAOのメリットであり、今の時代に必要とされる理由として挙げられるのが「透明性が高い組織であること」「参加者が平等であり、意見や議論がフェアに行われやすいこと」「ガバナンストークンによって資金調達を行いやすいこと」の3つです。
中央集権的な組織では自由な発想が受け入れられないこともありますが、透明性が高くフェアな議論を行うことができるDAOであれば、誰もが自由に発言し、その中からこれまでにない革新的な事業が生まれる可能性があります。
DAOのリスクや今後の課題
メリットの多いDAOではありますが、デメリットももちろん存在します。先にも触れたとおり、まだ世界各国でDAOに対する法的な整備は進んでおらず、訴訟のリスクなども考えておく必要があるかもしれません。
また、民主的に運営されることが大きなメリットのDAOですが、それがデメリットとなってしまうことも。参加者の投票によってさまざまな決定を行うという仕組みによって、意思決定が遅くなり、迅速な対応が必要なケースでも対応に遅れが出てしまうとなれば、大きなトラブルを招きかねません。
DAOの事例
今やさまざまなDAOが世界中に存在していますが、ここでは代表的なDAOと日本最大級のDAO、世界でも面白い取り組みを行っているDAOの事例をご紹介します。
|世界でもっとも成功しているDAO「ビットコイン」
世界初のDAOは「The DAO」ですが、このDAOは失敗に終わっており、世界初のDAOの成功例で今も維持されているDAOは「ビットコイン」であると言われています。
創設者もすでにおらず、完全に分散化された自律的組織となっていることがその成功の秘訣なのかもしれません。
|日本最大級のDAO「Ninja DAO」
デジタルマーケターであるイケハヤ氏とイラストレーターであるRil2氏が創業者である「Ninja DAO」は、日本最大級のDAOであり、誰もが気軽に参加することができる初心者向きのDAOであると言えます。
メインキャラクターでもある「Crypto Ninja」のNFTコレクションは人気が高く、このキャラクターを用いたコンテンツを開発しています。
通常は著作権違反となる二次創作を自由に制作することができ、さまざまなことにチャレンジできる環境が日本最大級のDAOである理由でしょう。
|デジタル村民が村を支える「山古志DAO」
山古志地域は大きな震災に見舞われ、その後人口の減少が進み、今は800人程度が住む地域です。高齢者の率も高く、このままでは消滅してしまうとも言われています。
それを解決すべく、NFTの購入者がDAOの一員となり、まちづくりに参加するというプロジェクトが新潟県長岡市の山古志地域(旧山古志村)で行われています。
旧山古志村が錦鯉発祥の地であることから、錦鯉をシンボルとしたデジタルアートをNFTとして発行。これはただのアートではなく、電子住民票の意味合いを持つNFTです。
居住者800人とデジタル住民10000人によるDAOで、共有財産を育んでいくプロジェクトとして、大きな注目を集めています。
まとめ
Webの次世代を担うDAOは国内でも注目を集めており、DAOをはじめとしたWeb3.0関連の開発に関するお問い合わせは、近年増加傾向にあります。
DAOの開発や構築、ブロックチェーンの開発は国内ではなかなか精通した人材がおらず、開発を行うのが難しいというお声も。実際、最先端の技術領域は日本国内においては特に人材不足が顕著な領域であり、国内にのみ目を向けていると機会損失にもなりかねません。
そこで、海外へと目を向けてみましょう。先端系の技術を有した人材が豊富なことに気づくはずです。DAOの開発や構築、ブロックチェーンの開発など、最先端の技術を活用した開発をお考えの際には、ぜひオフショア開発を検討してみてください。
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この記事を書いた人
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