最終更新日:2023/09/07
サーバーレスとは?メリットデメリットを事例も交えて解説
サーバーが必要不可欠だったこれまでの開発・運用が、近年登場した「サーバーレス」によって大きく変化しました。クラウド活用がAWSを中心として進み、サーバー運用のコストを減らすことができる「サーバーレス」は今、大きな注目を集めています。
このテキストでは、開発や運用におけるこれまでの課題を解決できる「サーバーレス」の基礎知識や提供サービス、メリットやデメリット、向き・不向きや実例など詳しく解説していきます。
INDEX
1. サーバーレスとは?
2. サーバーレスの仕組み
3. 主要なサーバーレスの提供サービス
4. サーバーレスのメリット・デメリット
5. サーバーレスは何に使えるのか?サーバーレスの向き・不向き
6. サーバーレスによるソリューション事例
サーバーレスとは?
「サーバーレス」とはそもそもどういったものなのでしょうか。まずは概要や特徴について確認しておきましょう。
|サーバーレスとは?
サーバーレス(serverless)は「サーバーを持たない」「サーバーなしの」という意味です。サーバーを運用・管理せずプログラムを実行できる仕組みであり、開発におけるサーバーの運用・管理が必要なくなるので、より多くのリソースを開発に割くことができます。
かつて、システム運用を行う際にはサーバーの調達が必須でした。自社でサーバーを運用する場合は24時間・365日、常にサーバーを稼働させ続ける必要がありますが、機器の経年劣化や不具合にも対応しなければならず、コストと手間がかかります。
サーバーのリソースを意識せず開発を行うことのできるサーバーレスならサーバーの管理は不要ですし、サーバーレスの多くは従量課金制を取っており、使った分だけコストがかかるため経済的です。
2014年、Amazonが導入したAWS Lambdaの登場によって注目を集めたサーバーレスは、その後多くの開発に採用されるようになりました。
|サーバーレスアーキテクチャ・サーバーレスコンピューティングとは?
前述したようにサーバーレスとはサーバーの運用・管理が不要になるクラウドサービスのことですが、サーバーレスアーキテクチャやサーバーレスコンピューティングとも言います。
サーバーレスアーキテクチャとは、サーバーレスでシステムを構築するアーキテクチャのことであり、一般的に「AWS Lambda」「Azure Functions」などのクラウドサービスを利用して構築されます。
常時稼働するサーバーがなくともシステムを構築できるのが特徴であり、例えばAWSの場合は処理のリクエストごとにAWS上の仮想サーバーにコンテナが作られ、コンテナ上で処理が行われ、処理が終わるとコンテナは削除されます。
サーバーレスコンピューティングとはクラウドコンピューティングの実行モデルを指す言葉であり、「AWS Lambda」はサーバーレス・コンピューティング・サービスを提供するプロバイダーという位置付けとなります。
いずれもサーバーレスを指す言葉ですので、最近は単にこれらを「サーバーレス」とひとまとめに呼ぶことが多いようです。
サーバーレスの仕組み
前項でも少し触れましたが、この項ではサーバーレスの仕組みについて解説します。
|サーバーレスにはサーバーがないのか?
サーバーレス(serverless)を訳すと、「サーバーを持たない」「サーバーなしの」という意味ですが、ここまでお読みいただいた方はすでにおわかりのとおり、実際はサーバーレスと言ってもサーバーがないわけではありません。サーバーを管理する手間なく、プログラムを開発するだけで実行が可能なため、サーバーレスと呼ばれています。
|処理のたびに都度起動する仕組み
常に稼働させておかなければならないサーバーとは異なり、トリガーとなるイベントが発生した時のみ起動するサーバーレスは、アイドル時間にはコストがかからず、使った分だけ課金される従量課金制を取っていることが多く、サーバー管理の手間がいらないだけでなくコスト削減にもつながります。
|他のクラウド利用形態との違い
サーバーレスはクラウドサービスの一種であり、BaaS(Backend as a Service)とFaaS(Function as a Service)の2種に分けられます。
BaaS(Backend as a Service)とはシングルページWebアプリのように、サーバーサイドのロジックなどの管理をサービスに依存するアプリケーションのことを言います。
FaaS(Function as a Service)とは一言で言うと「サーバーレスで開発できる環境を提供するサービス」のこと。現在注目されているサーバレスはこの「FaaS」に該当します。
クラウドサービスとしては他にもさまざまなものがありますが、「IaaS」「PaaS」「SaaS」などが代表的なクラウドサービスとして挙げられるでしょう。
「IaaS」「PaaS」はクラウド上に仮想サーバーを構築するため、常時稼働するサーバーがなくともシステムを構築できるサーバーレスとは異なります。「SaaS」はソフトウェアであるため、サーバーレスでSaaSを構築することが可能です。
それぞれがどのようなクラウドサービスなのか解説していきます。
・IaaS(Infrastructure as a Service):イァース、アイアース
サーバーを利用するためのインフラ環境をクラウドサービスとして提供しているのがIaaSです。クラウド上に仮想サーバーを構築します。
・PaaS(Platform as a Service):パース
OSやミドルウェアなど、開発するための環境をクラウドサービスとして提供しているのがPaaSです。IaaSと同じくクラウド上に仮想サーバーを構築します。
・SaaS(Software as a Service):サース、サーズ
インターネット上でアプリケーションを利用できるクラウドサービスのことです。Microsoft Office 365やAdobe Creative Cloudなど、かつてパッケージで販売されていたアプリケーションが、近年次々にSaaSモデルのサブスクリプションサービスへと変化しています。
主要なサーバーレスの提供サービス
サーバーレス(FaaS)として提供されているサービスで代表的なものと言えば、AWSの「AWS Lambda」、Microsoftの「Azure Functions」、Googleの「Google Cloud Functions」、IBMの「IBM Cloud Functions」が挙げられます。それぞれの特色を簡単に解説します。
|AWS Lambda:AWS(アマゾンウェブサービス)
2014年に注目を集め、サーバーレスが普及するきっかけを作ったと言われるAWS Lambda。「Lambda」は「ラムダ」と読みます。
Lambdaがサポートする言語でコードを指定するだけでプログラムが実行されます。2014年には60秒だった最大実行時間は2018年には900秒に拡大されました。
|Azure Functions:Microsoft
Microsoftのサーバーレス提供サービスAzure Functions 。「Azure」は「アジュール」と読みます。AWS LambdaやGoogle Cloud Functionsの動作タイプがサーバーレスのみであるのに対して、Azure Functionsはサーバーレスで動作する従量課金プランに加えてPaaS上で動作するプランがあります。
|Google Cloud Functions:Google
GoogleのクラウドプラットフォームであるGCP(Google Cloud Platform)に含まれるサーバーレス提供サービスがGoogle Cloud Functionsです。2016年から提供されており、基本的な機能はAWS Lambdaと同等ですが、Googleの各種サービスを安定して支えてきた実績が強みです。
|IBM Cloud Functions:IBM
IBMのサーバーレス提供サービスであるIBM Cloud Functions。もともとは「Apache OpenWhisk」という名称で提供されていたサービスが2017年に「IBM Cloud Functions」となりました。
サーバーレス提供サービスとしては4番手ではありますが、無料プランが充実しているのが強みと言えるでしょう。
サーバーレスのメリット・デメリット
|サーバーレスのメリット
サーバーレスには主に3つのメリットがあります。
・サーバーの運用がいらない
サーバーレスのもっとも大きなメリットは「サーバーの運用がいらない」ということ。すでに述べたとおり、物理サーバーを自社で管理するとなるとサーバー自体の運用だけでなく経年劣化などにも対応しなければなりませんが、サーバーレスならそういった対応は一切必要ありません。不具合時の回復性が高いレベルで担保されているのも安心です。
・コスト削減が実現する
サーバーレスで「コスト削減が実現する」というのも大きなメリットです。サーバーが不要となるコストだけでなく、利用した分だけ課金される従量課金制のため、利用コストもかなりおさえられるのも嬉しいところ。
・拡張性に富んでいる
「拡張性に富んでいる」というのもサーバーレスのメリットです。開発にあたってデータ量やアクセス数などを想定しなくても、サーバーレス提供サービス側で自動的に拡張を行ってくれるので、開発がスムースに進みます。
|サーバーレスのデメリット
サーバーレスの主な3つのデメリットについても確認しておきましょう。
・処理においてサービスによって制約がある
データの容量やタイムアウト時間の制限が存在するため、どのような制限があるのか把握して開発をしないと、思わぬ手戻りが発生することもあります。
・既存コードが使えないことがある
サービスによっては使えない言語もあるため、既存のコードをそのまま利用することができないことがあります。
・障害の原因の切り分けが難しいことも
障害が起きた際に、問題の原因が構築したアプリケーションやサービスにあるのか、クラウド側にあるのかがわかりにくいというのもデメリットの一つでしょう。
サーバーレスは何に使えるのか?サーバーレスの向き・不向き
サーバーレスは多種多様なアプリケーション開発に使える、非常に優れたサービスですが、メリット・デメリット同様にサーバーレスには向き不向きがあります。
サーバーレスが向いているのは新サービスやマイクロサービスです。対して、低レイテンシのアプリケーションや、大容量のメモリが必要なアプリケーションには向きません。
|向いている:新サービス
開発にスピード感を要する新規サービスの開発を、コストをおさえて取り組むことができるため、サーバーレスなら新しいサービスに挑戦しやすいと言えます。
|向いている:マイクロサービス
マイクロサービスとは独立した複数の小さなサービスの集合体として一つのアプリケーションを構成するアーキテクチャのことです。高速で小さなデータをやり取りすることや、システム同士の連携が得意なサーバーレスと親和性が高いアーキテクチャであると言えます。
|向いていない:低レイテンシのアプリケーション
サーバーレスではイベントの発生から処理までに時間がかかることがあり、イベントに対する応答速度が10ミリ秒未満を求められるアプリケーションには向かないと言われています。
|向いていない:大容量のメモリが必要なアプリケーション
前述したように、サーバーレスでは機能実行のメモリなどに制限があるため、大容量のメモリが必要なアプリケーションには向いていません。
サーバーレスによるソリューション事例
サーバーレスのメリットやデメリット、向き不向きがわかったところで、この項ではサーバーレスを活用した実際の事例を見ていきましょう。
|ダイソー
株式会社大創産業は100円ショップのダイソーを運営している企業ですが、POSシステムをオンプレミスからAWSに移行し、国内の店舗から集約したPOSデータが二重で登録されていないかチェックする作業にサーバーレスを活用しています。
各店舗から届くPOSデータは届く時間を予測するのが不可能なので、データが集中した際にはコンテナを複数立ち上げて処理に当たるよう対応しているのだとか。
|アサヒビール
アサヒビールは既存のオンプレミスシステムとサーバーレスを併用して活用している企業です。2018年からサーバーレスを活用した営業支援システムを利用開始。既存のオンプレミスシステムと合わせて利用しています。
サーバーレスのシステムはオンプレミスの顧客管理システムの拡張を目的に導入され、従来はPCでしか利用できず、情報の検索に数十秒かかっていたシステムの検索時間は1秒以内と大きく短縮。しかもスマートフォンから利用できるようになったため、利便性が格段にアップしたのだそう。
|NPB(日本野球機構)
2019年、NPB(日本野球機構)はプロ野球選手の写真を貸し出すサービス「NPB CIC」を支援するシステムにサーバーレスを活用。球団担当者が選手の写真を選択し、情報を追加する作業を自動で行うことができるようになり、1試合につき4時間要していた作業時間が30分まで短縮できたといいます。
まとめ
サーバーの運用や管理を気にせず開発に注力できるサーバーレスはその便利さから瞬く間に普及しました。これまで物理サーバーにかかっていたコストが大幅に削減されるため、多くのサービスがサーバーレスを利用して開発されています。
サーバーレスを利用した開発は人気を集めていますが、まだ比較的新しいサービスということもあり、経験豊富な人材がそう多くはないのが現状です。国内に限るとさらに人材不足が深刻で人件費も高騰しているため、コスト削減を目的にサーバーレスを活用しようとしても、かえってコストがかさんでしまう可能性も。
そこで、世界に目を向けてみるのはどうでしょうか。オフショア開発の活用で経験豊富な人材を採用できれば、人件費の削減にもつながります。海外に頼むのは不安……。という方は、ぜひ一度、専門コンシェルジュへの無料相談サービスをご利用ください。開発に関するお悩みやご要望をお聞きし、最適な専門家をご紹介できます。
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