最終更新日:2025/04/10
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近年、多くのソフトウェアが売り切り型からSaaSモデルへと移行しています。SaaSには顧客も企業も多くのメリットがあるため、ここまで一気に普及したのだと思われますが、ではSaaSビジネスに参戦するためにはどのような開発を行うべきでしょうか。
このテキストでは、SaaSとはどのようなものかといった基礎的な知識から、SaaSビジネスの市場規模、ビジネスモデルや開発フローについて解説していきます。
SaaSの基礎知識
まずはSaaSとはどういったものなのか、基礎的な知識について改めて理解しておきましょう。混同されることもあるPaaSやIaaS、ASPについてもあわせて解説します。
SaaSとは?
SaaS(サース、サーズ)とは「Software as a Service」の略であり、インターネットを経由してクラウド上にあるソフトウェアを利用できるサービスのことです。インターネットがあればいつでもどこでも利用可能であり、ストレージ機能があるサービスであれば複数名で編集したり管理したりすることができます。
よく知られる代表的なSaaSとしては、Microsoft365やサイボウズ、DropboxやGmail、Googleカレンダーなどが挙げられます。
SaaSは一般的にサブスクリプションベースでライセンスが提供されることが多く、ダウンロードしたりインストールしたり、といった買い切り型のソフトウェアに比べて互換性や運用管理の面において優れており、初期費用も低く済むことから近年一気に普及しました。
PaaS、IaaSとの違い
SaaSと似た言葉であるPaaSとIaaSについても確認しておきましょう。
PaaS (パース)は「Platform as a Service」の略であり、アプリケーションを開発するのに必要な、ハードウェアやOSといった実行環境を提供するミドルウェアのことです。
対してIaaS(イアース、イァース、アイアース)とは「Infrastructure as a Service」の略であり、日本語にすると「サービスとしてのインフラ」となります。その名の通り、CPUやストレージといったインフラをインターネット経由で提供するのがIaaSです。
ASPとの違い
ASPは「Application Service Provider」の略であり、ソフトウェアやその稼働環境をインターネット経由で提供する事業者のことを指す言葉です。本来は事業者を指す言葉であり、サービスを指すSaaSとは明確に区別される言葉ですが、転じてソフトウェアやサービスのこともASPと呼ぶようになり、SaaSと意味合いがほぼ同じ言葉として使われているのが現状です。
ASPは1998年頃に普及した言葉であり、これが2006年頃からSaaSという言葉に取って代わられるようになり、近年ではSaaSの方が一般的になりつつあります。
SaaSビジネスの市場規模
SaaSの概要が理解できたところで、SaaSビジネスの市場規模が近年どれほど増加しているのかを解説します。
なぜSaaSが注目されているのか?
アメリカの調査会社であるREPORT OCEANによると、2021年のSaaSの世界における市場規模は1,441億7,000万ドルとなっています。
サービスとしてのSaaSソフトウェアの世界における市場規模は、同調査によると2022年から2030年にかけて年平均成長率18.83%で成長し、2030年には7031億9000万米ドルに達するとも予測されています。
BOXILを提供するスマートキャンプの調査によると、国内のSaaS市場は2024年には約1兆1,200億円へと拡大すると予想されています。
国内SaaSスタートアップによる資金調達金額も市場拡大の流れに伴って増加傾向にあり、2017年は約400億円、2018年は約570億円だった調達金額が2019年には約750億円に達しました。
設立から5年以内のスタートアップ企業の調達金額も増加傾向にあり、SaaSスタートアップ1社あたりの平均資金調達金額は、2018年は3億円だったものが、翌2019年には4.8億円へと上昇しており、コロナ禍以前から市場は拡大し続けていたことがわかりますね。
コロナ禍もSaaSの追い風に
コロナ禍もSaaSの導入に追い風となりました。テレワークに便利であることだけでなく、世界的に都市の封鎖が行われた影響から、非接触技術の開発を行うためにSaaSを利用した企業も増えたようです。今後もSaaS市場はさらに成長していくと予想されます。
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SaaSのビジネスモデル
ここまでは、SaaSの基礎知識、市場規模や将来性について解説してきましたが、ここからはSaaSビジネスについて解説していきます。
SaaSのビジネスモデルにはどのような特徴があるのか
すでに少し触れたとおり、SaaSのビジネスモデルはサブスクリプション(*1)の料金体系によってマネタイズされます。そのため、顧客の獲得よりも顧客を長期的に維持することを重要視しなければなりません。
SaaSは継続的に利用してもらうユーザーのデータを収集しやすいため、ユーザーのデータからさらにサービスを充実させ、長期的にサービスを利用してもらうことができます。
また、基本的な機能を無料で提供し、高度な機能は有料とするフリーミアム(*2)との相性がいいのもSaaSの特徴です。
*1 サブスクリプション:「サブスク」と略されることもある言葉で、オンプレミスのように買い切って「所有」するのではなく、月額などの継続課金によって「利用」するビジネスモデルのことです。近年、多くのサービスがオンプレミスからサブスクリプション型へと移行しつつあります。
*2 フリーミアム:フリーミアムとは無料を意味する「フリー」と割増金を意味する「プレミアム」という言葉をあわせた造語であり、基本的なサービスや最低限の機能を無料で提供し、高度な機能については有料とするビジネスモデルです。このビジネスモデルは2006年にベンチャー投資家であるフレッド・ウィルソンによって示されたもので、氏のブログでこのビジネスモデルの名称を募集したところ、多くの名称の中からこの「フリーミアム」が採用されたのだとか。
成長モデルが確立されているSaaS
SaaSは成長モデルが確立されているビジネスモデルとも言われており、そのモデルは下記の4つの段階に分けられます。
- ビジネスプランの作成段階(自社におけるソリューションの適合を検討した上で作成)
- 有料顧客の獲得段階(この段階で市場ニーズもリサーチ)
- 顧客をさらに獲得する段階(顧客を維持し継続的なビジネスを展開)
- 成長段階(成長しつつ、次の展開を検討する)
成長が見込めるため運営がしやすいビジネスモデルであることが、SaaSが注目される理由の1つといえます。
SaaSビジネスに関連する用語
前項で述べたSaaSのビジネスにおける成長段階に関連する用語について解説します。
MRR:Monthly Recurring Revenue(月次経常収益、月間定期収益)
- 平均収益×顧客総数
- 毎月、繰り返し得ることのできる売り上げの全てのこと
チャーンレート(解約率)
- 離脱率、退会率とも。顧客がサービスを解約する割合
LTV:Life Time Value(ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)
- 一人の顧客が将来の関係全体に寄与する価値のこと。顧客から得られる継続的な収益の合計値
CAC:Cost Per Acquisition(顧客獲得単価)
- 顧客一人または一社を獲得するためにかかるコストのこと
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SaaSビジネスのメリット・デメリット
市場も拡大し続けており、スタートアップでも多くの資金調達が可能となっているSaaSビジネスは非常に魅力的なものですが、どんなビジネスにもメリットとデメリットがあるもの。SaaSビジネスのメリットとデメリットについて今一度確認しておきましょう。
SaaSビジネスのメリット
ユーザーにとってはいつでもやめられることや、常に最新版のソフトウェアを利用できることがメリットであるSaaSですが、企業にとっては継続的に収益が得られることや、ユーザーからさまざまなデータを得られることが大きなメリットです。
企業から見たメリットは他にも多数ありますが、代表的なものは下記の3つです。
- 継続的に安定した収益を得ることができる
- リリースにスピード感を持つことができる
- 顧客を育成することと獲得することが同時に可能
継続的に安定した収益を得ることができる
サブスクリプション型の課金方式を取っているSaaSにおいては、継続的な収益を得られることが大きなメリットです。ユーザーデータを分析することで継続率や平均期間などがわかれば長期的な売り上げの予測もより立てやすくなります。
リリースにスピード感を持つことができる
常にブラッシュアップが可能なSaaSはオンプレミス型に比べ、スピード感があるリリースが可能です。ユーザーはインターネット経由でサービスやソフトウェアを利用するため、ユーザー側がわざわざアップデートする必要もありません。
顧客を育成することと獲得することが同時に可能
前述したフリーミアム方式によって、「まず使ってから有料プランもしくは上位プランに切り替える」戦略を取れば、有料のプランしかないサービスよりも導入のハードルは低くなります。多くのSaaSはカスタマーサポートによるフォローアップを手厚くしており、SaaSの利用=顧客の獲得がそのまま顧客の育成にもつながります。
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SaaSビジネスのデメリット
ユーザーが利用する上でのデメリットは、ずっとコストが発生することや、メンテナンスや障害発生時に利用できなくなることなどが挙げられますが、企業から見たSaaSビジネスのデメリットは主に下記の3つです。
- 資金回収までの時間が長い
- 常にアップデートし続ける必要がある
- 常にフォローアップを行う必要がある
資金回収までの時間が長い
フリーミアム戦略によって無料期間を設けることや、サブスクリプション型であることが、資金回収まで時間がかかってしまう要因です。継続課金であるため長く売り上げを上げることはできますが、よほどユーザーを増やさない限り、一気に大きな売り上げを上げることが難しいのがSaaSのビジネスモデルのデメリットです。
常にアップデートし続ける必要がある
SaaSが顧客の維持を重視するビジネスモデルであることはすでに述べたとおりですが、顧客を維持するためには常にサービスや機能をアップデートする必要があります。作って終わり、ではないのがSaaSのユーザーにとっての魅力でもあり、企業にとっては手間のかかるデメリットともなります。
常にフォローアップを行う必要がある
顧客維持のため、多くのSaaSがカスタマーサポートなどフォローアップに力を入れていますが、カスタマーサポート担当者への負担が大きくなりがちなのもSaaSビジネスのデメリットの一つです。
SaaSの開発方法・開発フロー
開発方法
独自のサービスを開発するのですから、SaaSを開発するにはフルスクラッチで開発することが現時点では一般的です。
開発言語は開発環境によってさまざまですが、人事労務のSaaSサービスであるSmartHRは開発にRubyを使用しています。
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フルスクラッチとは、他のシステムを流用せず1からシステムを作り上げることを言います。下記の記事が参考になるのであわせてご一読ください。
* 参考記事:「スクラッチ開発は時代遅れ?パッケージ開発との比較とメリットデメリット」
開発において重視する点
サーバーダウンやサーバー障害はSaaSにとって致命的で深刻な問題です。インフラの設計を重視した開発を行いましょう。
また、UI/UXも顧客の維持にとって重要な要素ですから、こちらもしっかりとコストをかけて設計すべきです。ユーザーの声を聞いて改善することも大切です。
開発フロー
SaaSの開発は具体的にどのように進めるのか、こちらも段階的に確認しておきましょう。開発の流れは大きく分けて下記の5段階です。
- 1.ヒアリングをもとに要件定義を行う
- 2.試作・プロトタイプの作成
- 3.デザイン
- 4.開発
- 5.環境の整備
1. ヒアリングをもとに要件定義を行う
顧客となり得る顧客候補からヒアリングを行い、どのような業務で利用するのか、どのような課題を解決するのかを掘り下げ、それをもとに要件定義を行います。
要件定義はまずは最低限の要件でシンプルに作り上げてから後で機能を追加していきます。
2. 試作・プロトタイプの作成
簡単なプロトタイプを試作します。こちらを顧客候補に利用してもらい、使用感や不具合などのフィードバックをもらいます。
3. デザイン
仕様が決定したらデザインです。UIは前述した通り重要な部分ですから、しっかりと作り込みましょう。
4. 開発
仕様とデザインが決まったらいよいよ開発を進めます。エンジニアの選定が重要です。自社でいきなり全てを開発するのは難しいため、外注することが多いようです。
5. 環境の整備
最初の開発は外注したとしても、最終的には自社で開発や管理を行うことができるのが一番ですから、自社でクラウド開発が可能となる環境もしっかり整えておくとよいでしょう。
SaaSの具体的な事例
サービスの紹介
すでにここまでもSaaSサービスの名称をいくつか挙げてきましたが、他にも近年国内で話題になったSaaSサービスをご紹介します。最近はCMを積極的に打ち出しているサービスも多く、見たことがあるものが多いかもしれませんね。
sansan
松重豊氏のCMでお馴染みのsansanは名刺管理のSaaSサービスであり、多くのSaaSサービスがそうであるようにカスタマーサポートに力を入れているサービスです。
kintone
西遊記にかけたCMが印象的なサイボウズ社の「kintone」はSaaS型の業務アプリ構築サービス。簡単に自社の業務に合わせたシステムを作成することができます。他のシステムとも連携が可能。
freee
個人事業主や小規模法人向けのSaaS型会計サービスが「freee」です。請求書や決算書の作成や、給与計算も可能。フリーミアム戦略を採用しており、無料プランも用意されています。
まとめ
SaaSは近年一般的なものになっており、市場規模も拡大し続けています。
2021年のSaaSの世界における市場規模は1,441億7,000万ドルであり、国内のSaaS市場は2024年には約1兆1,200億円へと拡大すると予想されていますが、それでも世界のSaaS市場の10分の1にも満たない規模となっています。
SaaSビジネスを立ち上げたい、自社でSaaSサービスを開発したい。そんなご要望をお持ちの企業も増えていますが、近年国内のIT人材は深刻な人材不足となっており、コストも高騰しています。
前述したとおり、SaaS市場の規模はまだまだ海外の方が大きく、そのため海外にこそSaaS開発のスペシャリストが多いとも言えます。
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