公開日:2022/08/08 最終更新日:2023/08/07

マイグレーションとは?マイグレーションを阻む課題と解決策

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経済産業省がDXレポートにて2025年の崖問題について警鐘を鳴らしたのは2018年9月のことでした。それから4年が経とうとしている今、2025年はすぐそこに近づいており、多くの企業がDX化を進めていますが、未だDX化に遅れをとっている企業も少なくないようです。

 

このテキストでは、DX化によってレガシーシステムから脱却するための切り札の一つとも言われている『マイグレーション』について解説します。マイグレーションとは何か、混同しやすい用語との違い、マイグレーションの各種手法や種類、工程といった基礎知識から、マイグレーションの品質を担保するポイント、得られるメリットや今後の課題など、今だからこそ知っておきたいマイグレーションについて詳しく解説します。

INDEX

1. マイグレーションとは?

2. マイグレーションと混同しやすい用語

3. マイグレーションの手法

4. マイグレーションの種類

5. マイグレーションの工程

6. マイグレーションの品質担保のポイント

7. マイグレーションによって得られるメリット

8. マイグレーションにおける課題

マイグレーションとは?

『マイグレーション:Migration』とは、移動や移行、移住を意味する英単語ですが、IT用語として使われる場合にはデータやソフトウェア、システムなどを移転したり移行したりすることを指します。

 

DX化を阻む大きな要因としてレガシーシステムの存在が問題視されていますが、既存システムを新しい環境に移転することでレガシーシステム問題を解決するケースが増えています。特にオンプレミス環境からクラウド環境へと移行することが多く、マイグレーションという言葉がオンプレミスからクラウドへと移行するという意味で使われることも増えてきました。

マイグレーションと混同しやすい用語

マイグレーションの概要がわかったところで、混同しやすい2つの用語『コンバージョン(コンバート)』『リプレイス(リプレース)』との違いも確認しておきましょう。

 

|コンバージョン(コンバート)との違い

 

コンバージョン(コンバート)とは変換、転換という意味の言葉です。データやファイルを別の形式に変換することを言い、文字コードを変換したり、ファイル形式を変換したりといったことが例に挙げられます。ファイルの内容を別の言葉に翻訳する、という言い方だとわかりやすいでしょうか。

マイグレーションはデータなどを新しい環境に移行することであり、同じ内容を別の形式に変換するコンバージョン(コンバート)とは全く異なることがわかりますね。

 

|リプレイス(リプレース)との違い

 

リプレイス(リプレース)とは、交換や置換、元に戻すことを意味する言葉であり、古いシステムを新しくするという意味ではマイグレーションと似ています。ただし、リプレイス(リプレース)は古くなったシステムや壊れたシステムを新しくして元のものに戻すことを意味するので、古いシステムを最新版に移行するマイグレーションとは異なります。

マイグレーションの手法

マイグレーションがどういったものか、混同しやすい言葉も含めて理解できたところで、マイグレーションの手法についても知っておきましょう。

マイグレーションにはさまざまな手法があり、目的や状況に応じてどの手法を使うかは変わってきます。また、手法によって難易度も異なるため、自社のシステムに合った方法を選ぶことが必要です。

 

代表的なマイグレーションの手法として、ここでは『リライト』『リビルド』『リホスト』『ラッピング』の4つを解説します。

 

|リライト

 

リライトとは書き換え、書き直しを意味する言葉であり、既存のシステムのロジックは残したまま、新しい言語とプラットフォームへと変更する手法を言います。

同じリライトという手法でも、構造を変えずにリライトする方法や、オブジェクト指向へとリライトする方法などがあります。

システムのロジックは残るので、既存システムのロジック由来の問題を継承してしまう可能性があります。

 

|リビルド

 

リビルドは再建や再構築を意味する言葉です。IT用語としてはシステムを一から構築し直すことを指します。既存のシステムを受け継がず再設計していくので、レガシーシステムに起因したトラブルを根本から解決することが可能ですが、他の手法に比べて手間や開発規模も大掛かりなものとなります。

 

|リホスト

 

リホストとは、既存システムのロジックや言語は変えず、プラットフォームだけを移行する手法であり、インフラ刷新とも呼ばれます。例えば、現行のシステムをそのままクラウドに移行する、というのが一例として挙げられます。

もともとのシステムを踏襲するので企業にとっては比較的負担の少ない方法ではありますが、リライトと同じく、既存のシステムが起こすトラブルをそのまま受け継いでしまうこともあります。

 

|ラッピング

 

既存システムのメインフレームをそのまま再利用し、外部のオープンシステムからアクセスできるようにする手法をラッピングと言います。既存システムのデータベースなどにアクセスできる手段は増えますが、既存システムの基本的な構造はそのまま残るため、運用コストの削減にはつながらないと言われています。

マイグレーションの種類

何をどう移行させるのかによって、マイグレーションの種類は変わってきます。マイグレーションの種類は主に『アプリケーションの移行』『ストレージの移行』『データベースの移行』『レガシーマイグレーション』の4つに分けられます。

 

|アプリケーションの移行

 

システムやツールのアプリケーションを新しいものへと移行させるのが『アプリケーションの移行』です。移行の際にはデータ形式の変換や互換性などに注意が必要です。

 

|ストレージの移行

 

データを格納する場所を新しい格納先へと移行するのが『ストレージの移行』です。近年はクラウドへと移行するケースが増えています。

大規模な移行となると、システムやサービスの停止は避けられず、ユーザーへの周知なども必要となってきますが、近年は仮想化技術を用いた『ライブマイグレーション』という手法によって、ユーザーにマイグレーションを気づかせずに移行を完了できるケースもあるようです。

 

|データベースの移行

 

『データベースの移行』にはデータベースを新しいものへとバージョンアップする場合と、データベース製品の移行などが含まれます。こちらも近年は『ライブマイグレーション』を利用して移行を行うケースが増えているようです。

 

|レガシーマイグレーション

 

マイグレーションの中でも最も注目されており、現在の日本企業の多くの課題を解決するのが『レガシーマイグレーション』です。

レガシーシステムを新しいシステムに移行することを言い、特に古い環境で運用されているシステムを新しいOSを利用したシステムへと移行することを指します。

マイグレーションの工程

ここまでマイグレーションの手法や種類について解説してきましたが、実際にマイグレーションを進める際にはどのような工程があるのでしょうか。

 

マイグレーションの工程は主に『検証と調査・分析』『設計』『移行』『テスト』の4つに分類されます。

 

|検証と調査・分析

 

マイグレーションを行うにはまず、既存システムを利用している業務の内容や現在の状況、既存のシステムにおいて必要な資産と不要な資産を把握することが重要です。何を残し、何を捨てるのかを選定する必要があります。

 

|設計

 

プロトタイプの準備や変換ツールの選定を行い、設計へと進みます。設計書の作成や検証のためのツールを設計・開発します。

 

|移行

 

リハーサルを何度か行い、検証してから移行を行います。

 

|テスト

 

移行後はマイグレーションが正しく実施されたかをテストし、詳細な確認を行います。

マイグレーションの品質担保のポイント

前項ではマイグレーションがどのように進むのかを簡潔に解説しましたが、この項ではマイグレーションの品質を担保し、マイグレーション後のトラブルを避けるために重要なポイント『現新比較テスト』について理解しておきましょう。

 

|現新比較テスト

 

『現新比較テスト』とは、既存のシステムと新しいシステムそれぞれを実行した結果を比較・検証するテストのことです。

 

このテストでは実行結果をあらゆる点から比較し、検証する必要があります。しかも既存システムの実行結果と新システムの実行結果は異なることも一致することもあり、異なる方が正解である場合と、一致することが正解である場合があり、非常に複雑です。システムの規模が大きければ大きいほどその手間は膨大なものとなります。

 

マイグレーションにおいては膨大な数のテストを行う必要があり、マイグレーション全体の工数のうち、3割から5割はテストに費やされる工数であるとも言われています。

そのため、テストの効率を上げれば工数を削減できると考える企業も多いようですが、必要以上に効率化を進めるとテストの精度が下がり、移行後のトラブルを招きかねません。

 

テストを軽視せず、マイグレーションの中でも重要な工程であることを忘れないようにしましょう。

マイグレーションによって得られるメリット

テストと検証を怠らずにマイグレーションを進めることで、新システムでのトラブルを格段に減らすことができます。手間もコストも時間もかかるマイグレーションですが、得られるメリットについても知っておきましょう。

マイグレーションで得られるメリットは多く、どのようなマイグレーションを行うかによっても変わってきますが、どんなマイグレーションを行ったとしても共通するメリットとしては下記の3つが挙げられます。

 

|運用コストを減らすことができる

 

レガシーシステムには多額の保守コストがかかっています。従来のクローズドシステムでは開発者だけが保守できるという状態になっているものも多く、開発者が高齢で引退したり、システムが故障したりした際には保守や復旧が不可能となる可能性も。

 

マイグレーションでクラウドなどを活用した新しいシステムにすることで、保守・運用にかかるコストを削減することができます。

 

|セキュリティを強化することができる

 

古いシステムにはセキュリティの問題があることが少なくありません。前述したように開発者しかわからないブラックボックス化した部分があれば、その問題を見つけることすらできないかもしれません。

 

新しいシステムに移行し、最新の情報セキュリティ対策を施すことでシステムの高い安全性を保つことができます。

 

|既存の資産を有効に活用することができる

 

マイグレーションによって新しいシステムを構築したとしても、業務が大きく変わるわけではなく、むしろ使いやすくなることがほとんどでしょう。さまざまなシステムと連携することで、これまでのデータやノウハウを活かし、既存の資産を有効に活用することができます。

マイグレーションにおける課題

マイグレーションのメリットがわかったところで、マイグレーションにおける課題についても知っておきましょう。

 

マイグレーションの課題としてよく挙げられるのがシステム移行後のトラブルです。前述したようにテスト不足でシステム上のトラブルを招くこともあれば、新しいシステムによって業務フローに変化が起き、現場でトラブルが起きるケースもあります。

 

マイグレーションを行う際にはシステムだけでなく、業務フローについてもしっかりとシナリオを作り込むようにしましょう。

まとめ

2025年の崖問題について言及したDXレポートでは、レガシーシステムに起因する問題によって日本経済が停滞し、国際競争に遅れをとることが指摘されています。

DX化にはレガシーシステムからの脱却が必要不可欠であり、その鍵を握るのが今回解説したマイグレーションです。

すでに着手している企業も、これから着手する企業も、一刻も早く進めたいのがマイグレーションですが、国内のIT人材は慢性的に不足している中でDX化の激化によって争奪戦となっており、人材不足や人件費の高騰も大きな問題です。

日本のDX化は海外に比べて遅れていると言われますが、それは逆に考えてみると海外にはDXに精通した人材が多数存在する、ということでもあります。

オフショア開発なら、人材不足と人件費の高騰を両方解決することができる上、DX化の経験が豊富な人材を獲得することができます。

 

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この記事を書いた人

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オフショア開発.com 編集部

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