最終更新日:2023/08/18
【発注前に要チェック】システム開発会社の選び方|発注先の選定プロセスと注意点
近年、DX需要に伴いITアウトソースの動きも活発化しています。ERPなどの基幹システムの更改から、Webシステムやスマホアプリによる新規事業開発まで、対象となるプロジェクトも幅広くなっています。
そうしたプロジェクトの発注担当者の方にとって、非常に骨が折れるのがプロジェクトの発注先となるシステム開発会社の選定です。
「自社にあった開発企業はどこなのか?」「どの会社なら自社プロジェクトに最適な提案が期待できるか?」「そもそもどんな開発会社があるのか」...など、プロジェクトの成否を左右する重要なベンダ選定ですが、限られた工数の中で効率的に進めていく必要があります。
そこで本記事では、開発を成功に導くためのシステム開発会社の選定プロセスと注意点を解説します。本メディア(オフショア開発. com)は《オフショア開発》に特化した発注先選定支援サービスなので、オフショア開発企業を選定する際のポイントを押さえてまとめていますが、国内ベンダの選定でも共通の内容が多いので、ぜひ参考にしてください。
INDEX
1. 開発に成功する企業が発注時に実施していること
2. オフショア開発会社選定の流れ
3. まとめ
開発に成功する企業が発注時に実施していること
オフショア開発. comでは、毎年「オフショア開発白書」というオフショア開発の動向をとりまとめたレポートを制作・発表しています。その中で、オフショア開発の発注企業に対してアンケート調査を実施しており、そこで得られたデータをもとに、開発に成功する企業について探っていきます。
「開発の成功」を定義することは難しいですが、オフショア開発においては《コスト削減》が一つの指標になるかと思います。上記グラフは、「オフショア開発を発注することで、日本国内に比べどのくらいコスト削減できたか」を調査した結果です。
ご覧の通り、21%から30%のコストを削減できた企業がボリュームゾーンを形成しています。数千万以上の規模の開発であれば、20%ほどのコスト削減でも大成功と言えるかもしれませんが、ここでは仮に31%以上のコスト削減ができた企業を【開発成功企業】と定義してみます。
|発注時に比較検討する企業の数は?
上記グラフが、「オフショア開発企業を選定する際に、比較検討した企業数」を調査した結果です。
2〜3社を比較する企業が最も多い結果となりましたが、ここで先ほど定義した【開発成功企業】の割合を見てみると面白いデータを得ることができました。
|比較検討した企業の数が、1社〜3社の場合...
→【開発成功企業】コスト削減率31%以上の企業の割合:20.3%
|比較検討した企業の数が、4社以上の場合...
→【開発成功企業】コスト削減率31%以上の企業の割合:40.0%
以上のとおり、ベンダ選定において比較検討した企業数とコスト削減率には、一定の相関関係があると考えることができるかと思います。必ずしも、開発の成功やコスト削減が実現できるわけではありませんが、多くの開発会社から話を聞いてみることが重要です。
では実際にどのように開発会社を選定していくのか…選定のプロセスや確認するべきポイント、注意点などを解説していきます。
オフショア開発会社選定の流れ
オフショア開発会社の選定は次の7ステップで進めていくことを推奨しています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
STEP1:候補案件の具体化
まずは委託対象案件を具体化します。主に、案件内容、予算、外注範囲、スケジュール…等を明確にしていきます。もちろん、この段階で決められない内容を「未定」で問題ありません。
国内ベンダに発注するも同様なのですが、特にオフショア開発企業の場合、専門領域や委託可能な業務範囲が企業ごとに異なります。ですので、開発企業の選定における判断基準を具体化しておくことが効果的です。(* 柔軟に対応可能な会社、ある程度規模がありプロセスがしっかりしている会社…など)
また注意点として、「選定における判断基準の設定」と「ベンダ選定」は、しっかりと分けて行うことをお勧めします。開発企業の選定が始まった後で、判断基準が設定されると、有望なベンダの取りこぼしが起こる可能性があります。まず①候補案件を具体化した上で、②開発企業選定の判断基準を設定し、③候補ベンダの選定を進めるようにしましょう。
STEP2:候補ベンダの洗い出し
候補案件の具体化ができたら、候補となるベンダの洗い出して、候補ベンダリストを作成しましょう。
Web以外で候補ベンダの情報を収集する方法については、下記にまとめました。
|イベントで情報収集する方法
①展示会
・メリット
- 一度に多くの企業の情報収集可能
- 企業担当者と直接会話が可能
・デメリット
- 開催時期が限定的
- 会話できる時間が一般的に少ない
②マッチングイベント
・メリット
- 一度に多くの企業の情報収集可能
- 企業担当者と直接会話が可能
・デメリット
- 開催時期が限定的
- 会話できる企業数が展示会と比較すると少ない
③セミナー
・メリット
- 主催元企業のことをよく知ることが可能
- 関連知識を習得することが可能
・デメリット
- 主催元企業の良い面が強調されがち(営業色・宣伝色の強いセミナーあり)
|紹介により情報収集する方法
①業界団体
・メリット
- 多くの企業リストを取得可能
・デメリット
- 知見がないと選定が困難
- 自らで情報収集が必要
②知り合い
・メリット
- 信用のおける企業の確保が可能
- 紹介元の方にサポート頂けるケースあり
・デメリット
- 紹介後は断りづらい
- 自社案件にマッチしない可能性あり
STEP3:候補ベンダの絞り込み①
続いて、作成した候補ベンダリストから実際にコンタクトをとる企業の選定を行います。
選定を進める際のポイント(一例)として、次のような観点を参考としていただければと思います。
|会社概要
・確認のポイント
- 設立年
- 人数(オフショア現地 / 日本)
- 日本法人の有無と体制
- 役員メンバーの経歴
《注意事項》
特にオフショア開発においては、コミュニケーションやマネジメントが課題となるケースが多いです。日本法人の有無、ネイティブレベルで日本語ができる人材数、役員メンバーの経歴などを把握しておくとよいでしょう。
例えば、会社の規模が30名程度、役員メンバーとしてWeb上で3〜4名程度は名前が上がっていて、それぞれが日本国内の会社で働いていたような会社であれば、かなり手厚い開発体制を構築してもらえる期待ができます。会社の人数に対してキーメンバーが多く、日本国内での開発経験が豊富な会社は、日本のビジネス理解やコミュニケーションスキルなどでレベルが高い傾向にあります。
|開発実績
・確認のポイント
- 案件種類の傾向(業務システム開発 / スマホアプリ開発…どの領域が多いか)
- 適用技術の傾向(Java / PHP / Python…どんな開発言語を得意としているか)
- 案件規模の傾向(10人以上の規模 / 数名規模…どの規模感の開発が多いか)
- 受託範囲の記載有無
《注意事項》
委託したい案件と類似の開発実績があれば、自社のプロジェクトに対応できる可能性は高いといえるでしょう。開発会社によっては、対応できない開発言語や開発規模がある場合も考えられます。類似の実績有無だけでなく、あわせて開発規模や適用技術についてのチェックもするようにしておきましょう。
またオフショア開発においては、要件定義などの上流工程やマネジメントは日本側で対応していて、オフショア側では開発工程以降しかやっていないという会社が少なくありません。受託範囲が示されていない開発実績については、注意しておく必要があります。
|資料・サイト全般
・確認のポイント
- 日本語の品質
- 英語ページの有無
- 強みの具体的根拠
《注意事項》
日本語人材確保の観点では、日本市場に特化したオフショア企業かどうかを確認しておくことが重要です。英語圏の市場を向いている会社や、自国内の案件に加えて日本市場の案件も一部やっている会社など、様々なケースがあります。Webサイトやパンフレットの品質に関するページや開発実績などから確認してみましょう。
またWebサイトの日本語品質が悪い場合についても、会社の設立年が浅くHPがしっかりできていない会社は、案件受注に意欲的な企業である場合があります。
そうした企業はスキルがある人材をアサインしてくれたり、コスト面での譲歩が得られたりすることが期待できますので、とにかくコスト削減をしたいという場合は、選択肢の一つになり得ます。
STEP4:候補ベンダのヒアリング
候補ベンダの絞り込みができたら、選定した開発企業とアポイントをとり、面談・打ち合わせを実施します。2022年現在、新型コロナウイルスの影響による渡航制限も緩和されてきております。ぜひ可能な限り現地訪問をすることをお勧めします。
|打ち合わせのポイント
自社の状況(案件の検討状況、オフショア開発の経験…等)や聞きたいポイントを事前に伝えておくことで、より具体的な提案が期待できるようになります。
また、開発案件やスケジュールが決まっている場合は、可能であれば実際の案件担当者にも同席してもらうようにしましょう。
《注意事項》
開発会社によっては「できない」と基本的に言わない会社もあるので、開発企業側の説明をすべて鵜呑みにするのは危険です。本当に開発できるのか、事例や根拠の確認をすることをお勧めします。実績があるのであれば、どのように対応したのか深掘りすることで、信頼のおける開発会社かどうかを判断できるかと思います。
また現地出張をする場合は、せっかくの機会と予定を詰め込みすぎることがありますが、最大でも1日3社程度に収めることをお勧めします。駆け足で開発企業をまわっても、Webサイトなどでわかるような表面的な話しかできず、オフィスの雰囲気がわかるくらいで終わってしまうことがあります。
STEP5:候補ベンダへの情報提供依頼
続いて、選定した開発企業に対して情報提供依頼をします。案件が具体化されている場合は、実施しないケースもありますが、基本的には実施することを推奨しております。
下記のようなイメージでそれぞれの開発企業の情報を比較表にとりまとめることで検討しやすくなります。各社に情報提供を依頼する際には、特に会社情報、スキル情報、案件実績、ナレッジ化の取り組み…については確実に押さえられるようにするのがポイントです。
STEP6:候補ベンダへの情報提供依頼
ここまで来たら、候補ベンダリストから提案、見積もりを依頼する企業を選定しましょう。
選定にあたっては、自社の案件を責任を持って対応してもらえるかを確認することが重要です。そのための主な観点は下記になります。
|開発実績・スキル
・候補案件と類似した開発実績が多数あるか。
・候補案件と類似した案件の経験者で体制が確保できるか。
・特定のキーマン依存の体制となっていないか。
・プロジェクトマネジメントスキルはあるか。
|コミュニケーション
・質問や依頼した内容に適切な反応があるか。
・情報提供やメール等のレスポンスが早いか。
・確実に連絡がとれるコミュニケーションパスが確立可能か。
|意欲・責任感
・意欲的に情報提供や提案があるか。
・スキルのある人材のアサインがあるか。
・案件着手後、組織的なサポートがあるか。
・経営者が信用のおける人物か。 * 特に比較的小規模な企業の場合
《注意事項》
会社として開発実績があっても、当該経験者がアサインされないケースもあります。体制が確保できるか確認しておきましょう。また、リーダークラスの人材を外部から調達してくるケースも想定されますので、特定のキーマンに依存していないか、離職のリスクヘッジがされているかも重要な観点です。
またコミュニケーション、マネジメントのスキルを経営者・窓口担当者が有しているかもチェックしましょう。オフショア開発において、ブリッジエンジニアはコミュニケーターであるとともにプロジェクトマネジメントの立場も兼ねることが多々あります。単なる通訳ではなく、プロジェクトマネジメントをしっかりと理解しているかを確認してください。
STEP7:提案・見積り
RFPを作成して提案、見積もりを開発会社に依頼します。開発会社が作成した提案、見積もりを確認して、最終の1社を確定します。
発注先を決定するポイントとしては、発注元の要求通りに案件を完遂可能か、が特に重要になります。観点としては下記になります。
|案件の理解度
・RFPに記載した記載事項が全て反映されているか。
・前提条件や制約条件が洗い出されているか(検討されているか)。
・見積もり項目に抜け漏れはないか。
|提案内容の妥当性
・体制やスケジュールは現実的か。
・見積もり工数とコストは妥当な金額か。
|マネジメントスキル
・見積書として記載すべき項目が網羅されているか。
(前提条件、契約形態、提供物、納品物、開始条件…等)
・提案書、見積書から、成果物の完成がイメージできるか。
まとめ
システム開発成功のポイントは「開発ベンダとの相性」が非常に重要です。自社にあった開発企業を選ぶことで、余計な費用やコミュニケーションコストの発生を抑えることができたり、品質を担保することができます。
今回、最適な開発ベンダの選定プロセスと注意点を解説しましたが、開発企業の能力をどのように判断したらよいのか迷う際には、「オフショア開発. com」にご相談ください。「オフショア開発. com」では、多数のオフショア開発企業とパートナー契約を結んでおります。案件の具体化やオフショア開発企業のリストアップ、候補ベンダの絞り込みなど、本記事で解説した工程をトータルでサポート可能です。ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。