公開日:2022/06/08 最終更新日:2023/09/07
開発手法比較でわかるプロトタイプ開発|メリットデメリットと向いている開発案件
INDEX
1. プロトタイプ開発とはどのような開発手法なのか
2. プロトタイプ開発の流れ
3. プロトタイプ開発により期待されるメリット
4. プロトタイプ開発におけるデメリットやリスク
5. 開発方式比較(ウォーターフォール / アジャイル / プロトタイプ型)
6. プロトタイプ開発に適した案件とは
7. プロトタイプ開発事例の紹介
プロトタイプ開発とはどのような開発手法なのか
|プロトタイプ開発とは?
プロトタイプとは試作品という意味であり、自動車や鉄道、模型などにおいても使われる言葉ですが、開発においてもプロトタイプを作成する開発プロセスが存在し、それをプロトタイプ開発と言います。
プロトタイプ開発では、開発の最初の段階で簡易的なシステムのプロトタイプを作り、クライアントに確認してもらい、そのフィードバックをもとにシステムを完成させていきます。
|プロトタイプ開発の目的 / なぜ注目されるのか?
プロトタイプ開発の目的は開発全体の工数を減らすことです。
この開発手法は早い段階からシステムの操作感や見た目のイメージを確認できるため、クライアントと開発側の間で認識のずれがないか、操作における不具合はないか、といったことを早期発見できます。そのため、不具合の少ないシステムを迅速に開発することが可能として、近年多くの開発に活用されています。
|MVP開発、モックアップとの違い
試作品を作成する開発手法として、MVP開発やモックアップを思い浮かべる方も多いでしょう。この2つとプロトタイプ開発は何が違うのでしょうか。
MVP開発とは、最小限の機能を持ったシステムを作成し、実際に市場に出してユーザーの反応を見ながら改善を繰り返すという手法です。
モックアップは見た目を確認するための試作品であり、操作感を確認することはできません。
プロトタイプ開発におけるプロトタイプはあくまで試作品であり、そのままで世に出ることはありませんし、見た目だけではなく操作感もしっかり確認できるようになっています。
プロトタイプ開発の流れ
プロトタイプ開発の要件定義からリリースまでの流れは大まかに分けて下記の7ステップで構成されます。
①要件定義・設計
↓
②試作システム(プロトタイプ)開発
↓
③評価
↓
④修正
↓
⑤評価
↓
⑥必要に応じて修正と評価を繰り返す
↓
⑦リリース
では、それぞれのステップを確認していきましょう。
|要件定義・設計
どんな手法を使った開発であっても必ず必要なのが要件定義と設計ですが、プロトタイプ開発においては、要件定義も設計もあまり厳密に行わず、簡潔なものを作るのが一般的です。まずはプロトタイプを作成した上でフィードバックをもとに具体的な内容を詰めていく、という手法なので、最初から要件や設計内容をがっちりと固める、ということは行いません。
|試作システム(プロトタイプ)開発
大まかな要件定義と設計が定まったら、プロトタイプを作成します。クライアントが実際に操作感やUIを確認するものではありますが、フィードバックが目的なので、メイン機能中心で実際の操作イメージがわかるようなものを作成します。
|評価
完成したプロトタイプを実際に操作・確認し、評価するのがこの段階です。一般的にはクライアントに共有し、フィードバックをもらいますが、案件によってはユーザーからフィードバックをもらうケースもあります。
|修正
フィードバックをもとにプロトタイプの修正や追加を行います。
|評価
修正後は再度、クライアントに操作してもらい、再度フィードバックがあればプロトタイプの修正を行い、完成に近づけていきます。
|必要に応じて修正と評価を繰り返す
必要に応じてフィードバックと修正を繰り返します。修正が何回あるかは案件によって異なります。
|リリース
修正とフィードバックを経て、評価の段階をクリアしたら本開発となり、いよいよリリースです。その後は運用・保守を行い、不具合の修正やアップデートなどを対応します。
プロトタイプ開発により期待されるメリット
プロトタイプ開発にはさまざまなメリットがあります。「クライアントとの認識違いを避けることができる」「開発初期に要求を全て出さなくても開発を始めることができる」「不具合の早期発見がしやすい」「高い品質を実現できる」というのが主なメリットであり、これらのメリットによって、結果、開発全体の工数を抑えることができるのです。
|クライアントとの認識違いを避けることができる
試作品を共有し、フィードバックをもとに修正して開発を進めるプロトタイプ開発は、クライアントと開発サイドの間に生じがちな認識違いを避けることができます。
|開発初期に要求を全て出さなくても開発を始めることができる
厳密な要件定義を行う必要のないプロトタイプ開発は、開発初期に要求が全て出揃っていなくても開発を始めることができます。
|不具合の早期発見がしやすい
評価フェーズではクライアントからプロトタイプを実際に操作した上でのフィードバックを得られるので、不具合やバグにも気づきやすく、早期発見が可能です。
|高い品質を実現できる
クライアントや、場合によってはユーザーからのフィードバックをもとに修正を行うということは、ニーズの検証を行いながら開発ができるということでもあります。そのため高い品質のシステムを実現できるのです。
プロトタイプ開発におけるデメリットやリスク
いいことばかりに見えるプロトタイプ開発ですが、もちろんデメリットやリスクも存在します。「開発が長引く可能性がある」「コストがかさむ」「開発側にかかる負担が大きい」といったことがデメリット・リスクに挙げられるでしょう。
|開発が長引く可能性がある
厳密に要件定義を行わず、フィードバックと修正を繰り返しながら完成に近づけていくプロトタイプ開発は、当初は想定していなかった機能が必要なことが開発途中で判明した、というケースでは開発期間がその分長引いてしまい、莫大な工数がかかってしまうというリスクも。
|コストがかさむ
開発が長引く可能性があるということは、コストもその分かさむ可能性があるということです。これも大きなリスクと言えるでしょう。
|開発側にかかる負担が大きい
試作品を作成・修正を繰り返すプロトタイプ開発は、開発側にかかる負担が大きい開発方法でもあります。プロトタイプ開発を得意とする開発会社を選定しなければ、プロジェクトが泥沼化してしまうことも。
開発方式比較(ウォーターフォール / アジャイル / プロトタイプ型)
MVP開発やモックアップとの違いについては先述したとおりですが、この項ではウォーターフォール開発やアジャイル開発との違いについても改めて確認しておきましょう。
|ウォーターフォール開発
ウォーターフォール開発では要件定義や設計を厳密に行い、上流工程から下流工程に、と水が流れるようにプロジェクトを進めることが名称の由来です。
ウォーターフォール開発の場合はシステムが完成した段階でクライアントが実際に操作できる状態となります。対して、プロトタイプ開発は開発途中の段階でシステムを操作し、完成イメージをつかむことができます。
開発工程が決まっているウォーターフォール開発は、プロトタイプ開発のような柔軟性はありませんが、全ての工程の順序が明確であるため、コミュニケーションコストを下げることができます。大規模な開発に向いている手法と言えるでしょう。
|アジャイル開発
開発工程を細かく区分し、その区分ごとに短期間の開発フェーズを繰り返すのがアジャイル開発です。都度フィードバックを受けるのはプロトタイプ開発と似ていますが、アジャイル開発では試作品を作成するわけではなく、本番のシステムを開発し、その開発工程についてクライアントが確認とフィードバックを行うという手法です。
プロトタイプ開発よりもさらにクライアントとのコミュニケーションを密に取って進めていくアジャイル開発は、柔軟性に富んだ開発手法として近年プロトタイプ開発と同じく、多くの企業に取り入れられています。
プロトタイプ開発に適した案件とは
プロトタイプ開発は機能が多すぎると開発期間やコストがかさむため、大規模な開発には向いていませんが、新規開発やUIを重視する開発、クライアントがシステム開発を具体的にイメージできていないケースなどに向いています。
|新規開発
まだ世に出ていない新しいシステムを開発する場合は、プロトタイプとして形にすることでクライアントも開発サイドもシステムのイメージを共有しやすくなります。
|UIを重視する開発
近年、多くのアプリケーションがUIを重視する傾向となっていますが、プロトタイプ開発は実際に操作したクライアントやユーザーのフィードバックを参考にUIを改善することができます。
|クライアントがシステム開発を具体的にイメージできていないケース
作りたいシステムのイメージが明確になっていないクライアントの場合、プロトタイプがイメージを固めて完成させていく手助けとなります。
プロトタイプ開発事例の紹介
プロトタイプ開発によって世の中に生み出されたプロダクトは数多くありますが、中でも有名なのが任天堂の「Nintendo Labo」とダイソンの「G-Force」でしょう。
|Nintendo Labo(任天堂)
段ボールとゲームソフト、Nintendo Switchを使ってコントローラーを自分で作って遊ぶという『Nintendo Labo』はプロトタイプ開発で作られたプロダクトです。段ボールでできていることからプロトタイプも作りやすく、プロトタイプを実際に子どもたちにプレイしてもらってフィードバックから修正を繰り返し、リリースに至りました。
|G-Force(ダイソン)
吸引力が落ちていく従来の掃除機に不満を抱いていたダイソン社の創業者ダイソン・ジェームス氏は、紙パックが目詰まりすることがその原因であると気づき、5年間で5000以上の試作品を作成し、吸引力の変わらない掃除機を開発しました。
|ロボットのプロトタイプ開発(農研機構生研支援センター、JR東日本グループ)
果実生産における労働の軽減を目的として、農研機構生研支援センターが果実収穫ロボットのプロトタイプ開発を行っており、JR東日本グループは駅におけるサービスロボットを開発・導入するための有限責任事業組合を立ち上げ、自立移動ロボットのプロトタイプ開発を進め、2021年に論文を発表しています。
さまざまな開発において活用されているプロトタイプ開発は開発の過程において思わぬ問題を発見できることもあり、多くの研究にも使われているようです。
まとめ
かつてシステム開発といえば大規模なものが多く、コミュニケーションコストをおさえて迅速かつ正確に開発を行うウォーターフォール開発が主流でした。近年は市場のスピードが速く、迅速な開発が求められており、新しいサービスやシステムも毎日のようにリリースされています。そのため、プロトタイプ開発やアジャイル開発といったスピード感とコミュニケーションを重視した開発手法が小〜中規模の開発においては主流となりつつあります。
プロトタイプ開発は非常に優れた開発方法ですが、開発会社の選定を誤ると開発が長引き、結果工数やコストが莫大なものになるリスクもある手法です。そのためプロトタイプ開発に慣れている開発会社を選ぶ必要があります。
国内のIT人材は近年深刻な人手不足に陥っており、人件費も高騰しています。プロトタイプ開発が得意な優秀な開発会社や人材を得ようと思うと、なかなか難しいというのが実状です。
開発コストをおさえ、プロトタイプ開発を迅速に進めたいなら、オフショア開発を選択肢の一つとしてお考えください。専門コンシェルジュにお問い合わせいただければ、無料で開発に関するお悩みにお答えします。
この記事を書いた人
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