公開日:2024/08/29 最終更新日:2024/08/29

OKRとは?企業導入の具体例から設定方法のポイントまで簡単に解説!

OKRとは、「Objectives and Key Results」の略で、組織や個人の目標設定とその達成を促進するためのフレームワークです。シンプルでありながら強力な目標管理方法として、1970年代にIntel社が採用。Googleやメルカリといった多くの有名企業で導入されています。

この項では下記の2つを解説していきます。

  • OKRの基本概念
  • OKRとKPIの違い

OKRの基本概念

OKRは「O:Objectives(目標)」と「KR:Key Results(主要な結果)」の2つの要素で構成されています。Objectiveは「何を達成したいのか」であり、野心的かつ明確な目標を設定します。

Key Resultsは「目標の達成をどう測定するか」であり、Objective達成の進捗を具体的に測定するための指標です。

OKRはただの目標管理ツールではなく、組織全体の方向性を一つにまとめるための重要なフレームワークです。まずは企業全体のOKRを設定し、それにリンクする形で部門、チーム、個人…というように階層ごとにOKRを設定します。

企業全体の目標とリンクした目標をチームや個人が設定するため、企業全体が同じ方向を向いて取り組むことができます。そのため、組織のパフォーマンスを最大限にすることができるのです。

また、一般的な目標設定よりも高い頻度で見直し、更新を行うこともOKRの大きな特徴です。

OKRとKPIの違い

OKRとKPI(Key Performance Indicators)は、いずれも目標管理に使用されますが、その意味や目的、使用方法には大きな違いがあります。

KPIは通常、現状のパフォーマンスを測定するための指標であり、定常的に追跡されるものですが、OKRは達成すべき目標に焦点を当て、より短期間での達成を目指すフレームワークですから、全く異なるものだということがわかりますね。

OKRの設定方法!ポイントを紹介

効果的なOKRを設定するには、以下の3つのステップが重要です。

  • O(objectives:目標)を設定する
  • KR(key results:主要な結果)を設定する
  • 健全性指標を設定する

これらのステップを企業全体、部門やチーム、個人…というように上位から順に設定していきます。では、OKRのステップごとにポイントを確認していきましょう。

O(objectives:目標)を設定する

Objectiveは挑戦的かつ達成可能なものであり、組織の成長を促進することが求められます。Objectiveを設定する際には必ず定性的(数字で表せない)内容にすることが大切なポイントです。一ヶ月から四半期で7割程度達成できる目標が理想的とされています。

Objectiveはできれば1つだけ設定したいところです。どうしても増えてしまう場合は3〜5程度に絞りましょう。

企業全体のObjectiveなら、従業員のやる気を引き出すような言葉で、シンプルで具体的、かつ野心的な目標にしましょう。例えば、「新しいアイデアで常に○○業界をリードする企業になる」「顧客のニーズをいち早くつかみ、顧客満足度の高い企業になる」などが一例です。

ここでは定量的な売上目標やパーセンテージなどは一切設定しないことです。

KR(key results:主要な結果)を設定する

Key Resultsは、Objectiveを達成するための具体的な指標です。何をもってObjectiveを達成できるのかを考えて、定量的(数字で表せる)内容で、進捗状況を測定するための明確な基準を設定します。

Key Resultsの設定には、簡単ではないものの達成は可能なレベルで、かつ明確に測定できる指標を選ぶことが重要です。

ここではただ「売上を上げる」ではなく「前年比120%の売上を達成する」といったように具体的な数値を必ず設定するようにしましょう。

健全性指標を設定する

OとKR以外に設定しなければいけないのが健全性指標(Health Metrics)です。健全性指標とは、目標達成を追求する中で見落としがちな要素を監視するための指標です。信号機の3色、青・黄・赤の3つの段階で表します。青は問題なし、黄は注意、赤は危険というふうに青から黄、赤へと変わるごとに危険度が高くなります。

目標達成を追求する中で見落としがちな要素とはなんでしょう。売上15%アップを目指す中で、OKRの向上させたい項目以外に重要なこと、かつ常に中止していかなければいけないこと。例えば、従業員の健康や、既存顧客の満足度などが挙げられます。

従業員の健康が思わしくなければ、目標を達成し続けることは難しいですし、新規顧客にばかり注力して既存顧客の満足度を下げてしまっては本末転倒です。

健全性指標を設定することで、目標達成の過程で組織やプロジェクトがバランスを失わないようにします。

OKRの具体例

ここでは、下記の2つの切り口からOKRの具体例を紹介します。

  • 営業部門におけるOKRの具体例
  • 事務職におけるOKRの具体例

営業部門におけるOKRの具体例

営業部門でのOKRの具体例としては、「新規顧客獲得を通じて市場シェアを拡大する」などがあります。

営業部門においては、顧客獲得や売上増加などの直接的な成果が重要視されます。これに伴い、目標設定は短期的な成果を重視しつつも、中長期的な成長戦略に基づいて作成するとよいでしょう。

以下は短期・中期・長期のOKR設定の一例です。

短期(1~3ヶ月)

Objective: 新規顧客獲得のための基盤強化

Key Results:

  1. 新規リードを100件獲得する
  2. 週ごとの問い合わせ数を25%増加させる
  3. リードからの商談化率を10%に引き上げる

中期(6ヶ月)

Objective: 顧客転換率を改善し、売上につなげる

Key Results:

  1. 顧客への提案書の質を向上させ、受注率を15%増加させる
  2. セールスプロセスの各段階での離脱率を20%削減する
  3. クロージングまでのリードタイムを10日短縮する

長期(12ヶ月)

Objective: 市場シェアを拡大し、ブランド認知度を高める

Key Results:

  1. 新規市場に参入し、10%以上のシェアを確保する
  2. 既存市場での主要顧客との契約更新率を95%に維持する
  3. 年間のリピート購入率を25%向上させる

事務職におけるOKRの具体例

事務職におけるOKRの具体例としては、「業務効率の改善を通じてコスト削減を実現する」などがあります。

事務職では、効率性や正確性が重要であり、業務のスムーズな進行と時間の節約が焦点となることが多いでしょう。また、長期的な運用改善にも目を向ける必要があります。

以下は短期・中期・長期のOKR設定の一例です。

短期(1~3ヶ月)

Objective: 書類処理の効率と正確性を向上させる

Key Results:

  1. デジタルツールの導入を通じて1件あたりの書類作成時間を平均2分短縮する
  2. 定型業務の自動化を実施し、手作業を5%削減する
  3. ミス発生率を5%削減し、重要なエラーを0にする

中期(6ヶ月)

Objective: 業務プロセスを見直してコスト削減を実現する

Key Results:

  1. 資源の無駄遣いを削減し、月次経費を5%削減する
  2. 紙の使用量を30%減少させる
  3. 業務プロセスの見直しにより、時間外労働を10%削減する

長期(12ヶ月)

Objective: 業務プロセスを最適化し、チーム全体の効率性を向上させる

Key Results:

  1. 全社的なプロセス改善プロジェクトを実施し、全業務の効率を一括見直しする
  2. 業務手順書を整備し、社内教育の時間を40%短縮する
  3. 月次報告書の提出期限を2日短縮する

OKRでよくある質問

最後に、OKRでよくある質問の中でも下記の3つについて解説します。

  • 「OKRは意味がない」と言われる理由は?
  • OKRでおすすめのツールは?
  • OKRは人事評価にも活用できる?

「OKRは意味がない」と言われる理由は?

「OKRは意味がない」と言われることがあるのは、適切に設定されず、実行されない場合が多いためです。主に下記のような理由があると考えられます。

  • 目標の数が多すぎる
  • 目標のレベルが高すぎる、もしくは低すぎる
  • 定期的にOKRを更新していない

目標の数が多すぎる

多すぎる目標は組織やチームの集中力を分散させてしまうため、成果を得づらくなります。目標の数を絞り、最も重要なものに集中しましょう。前述したように、多くても3〜5に絞ることが重要です。

目標のレベルが高すぎる、もしくは低すぎる

目標があまりにも高すぎる、または低すぎると、社員のモチベーションに影響を与える可能性があります。OKRの成功には、適切な難易度の目標を設定することが必要不可欠です。

適切な難易度の目安は、達成率7割程度と言われています。

定期的にOKRを更新していない

OKRは四半期ごとに見直す必要があります。都度、目標や結果の達成状況に応じて調整をしていかなければなりません。これを怠るとOKRが形骸化してしまい、効果が薄れてしまいます。

このように、目標が曖昧であったり、進捗管理が疎かになったりすると、OKRは効果を発揮しません。効果的なOKR運用には明確な目標設定と定期的な見直しが欠かせないことを知っておく必要がありますね。

OKRでおすすめのツールは?

OKR管理に役立つツールは数多くあります。人事評価ツールにOKRに役立つ機能が組み込まれていることも多いですし、プロジェクト管理ツールをOKRに活用する企業も多いようです。もちろん、OKRに特化したツールもあります。目的や用途に応じて選ぶと良いでしょう。

ここではOKR特化ツール、人事評価ツール、プロジェクト管理ツールをそれぞれ2つずつご紹介します。ほかにもさまざまなツールがあるので、比較検討して自社に適したものを見つけてください。

<OKR特化ツール>

OKRだけに特化したツールは、余分な機能が少ない分、見やすく操作が簡単であるという利点があります。OKRを企業内に浸透させたい、マネジメントの中心に置きたいなら特化したツールをまず使ってみるのが良いでしょう。

Resily

国内企業が提供しているOKRに特化したツールです。OKRツリーが見やすく、方針や戦略の透明性を高められるとして人気があります。

Weekdone

OKRに特化したツールです。無料プランや無料トライアルも提供されているソフトウェアであり、操作が簡単で週次報告や進捗管理が行いやすいという特徴があります。

<人事評価ツール>

人事評価ツールには、目標管理の機能があるものが多いため、OKR用の機能がなくても目標管理シートで代用することもできます。すでに使用している人事評価システムなどがある場合は、OKRに活用できる機能があるか調べてみると良いでしょう。

HRBrain

人材データの管理や分析などを行うクラウド型の人事評価ツールです。OKR専用のテンプレートが用意されています。目標進捗のデータを可視化することが簡単にできるのが嬉しいポイント。

HRMOSタレントマネジメント

CMで有名なビズリーチが提供しているタレントマネジメントのためのツールです。目標・評価シートをOKR用にカスタマイズすることができます。

<プロジェクト管理ツール>

プロジェクト管理用のツールも、OKRに活用しやすいツールの一つです。OKR用のテンプレートが用意されているものもあるため、すでに活用しているプロジェクト管理ツールがあるなら、そちらを使ってみるのも良いでしょう。

Asana

プロジェクト管理ツールとして広く使われており、OKRのテンプレートも用意されています。タスク管理との連携がスムーズで、チーム全体での目標共有が簡単です。

Trello

ボード形式でタスクを管理でき、OKRの進捗状況を簡単に確認できます。ドラッグ&ドロップで直感的に操作できるツールなので、初心者にも扱いやすいです。

選ぶポイント

OKRツールを選ぶ際には、以下の3つのポイントに注意しましょう。

  1. チームの規模に適したツールを選ぶ

一般的に、小規模チームにはシンプルで直感的なツール、大規模チームには複雑なデータ分析が可能なツールが適していると言われています。

  1. 既存のツールとの統合性を確認する

使用中のプロジェクト管理ツールやコミュニケーションツールとの連携が可能か、確認した上で検討や導入を行いましょう。

  1. コストと機能のバランス

無料プランやトライアルを活用し、コストと機能のバランスが取れたツールを選ぶことが重要です。

OKRは人事評価にも活用できる?

OKRは人事評価に活用することも可能なため、各種人事ツールにオプションとして組み込まれていることが多い目標管理手法ですが、その際に注意が必要なポイントがあります。

OKRはチャレンジングな目標を設定するため、評価基準として用いると従業員が保守的な目標を設定してしまうというリスクがあります。そのため、OKRは人事評価とは切り離すべきとする考えが一般的ですが、OKRを評価に組み込む場合は、成果だけでなくプロセスや学びの観点からも評価を行うことが重要です。

OKRのまとめ

OKRは、組織と個人の目標を一致させ、効率的に目標を達成するための強力なフレームワークです。OKRを導入することで、全社員が同じ方向に向かって協力し合い、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。OKRを効果的に活用するためには、目標と成果を明確に設定し、定期的なレビューを行うことが重要です。また、健全性指標を設定してバランスを保ちながら、チーム全体での共有とフィードバックの文化を育むことも成功の鍵となります。

OKRは単なる目標管理ツールではなく、組織全体の方向性を一つにまとめるための重要なフレームワークです。ぜひ、この記事で紹介したポイントを参考にして、自社でのOKR導入に役立ててください。

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この記事を書いた人

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オフショア開発.com 編集部

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