公開日:2021/05/17 最終更新日:2023/08/25
ノーコード(NoCode)を解説|今後のIT開発はどう変わる?
ノーコード(NoCode)とは、プログラミングの必要なくWebサイトやアプリケーションを作ることができる手法のこと。誰でも簡単にWebサービスの開発ができるとして人気を集めています。
このテキストではノーコードの歴史やノーコードでできること、またメリットやデメリットなどの基礎知識から、今後のIT開発がどのように変わっていくのかなども分析していきます。
INDEX
1. ノーコードとは?
- ノーコードとは?
- ノーコードがなぜ今注目されているのか
- DXにも貢献すると期待されているノーコード
- ノーコードの特徴
2. ノーコードのメリット / デメリット
- メリット
- デメリット
3. ノーコードツールの紹介
- アプリ制作
・Bubble
・Appsheet
・Adalo
・Amazon Honeycode
- ECサイト構築
・Shopify
4. ノーコード登場により今後のIT開発はどう変わる?
- ノーコードでエンジニアが不要になる?
- 今後の展望
- ノーコードの課題
ノーコードとは?
|ノーコードとは?
ノーコードとは、プログラミング不要でサイトやアプリを作ることができる手法のことですが、日本でプログラミングと呼ばれているものは、英語ではコーディングと呼ばれるのが一般的であるため、コードがいらない=ノーコード、という名称がつけられました。
ノーコードの歴史を紐解くと、1980年頃に最初のノーコードツールが登場しています。今ではオフィスで誰もが使うソフトとなったWordやExcelです。それまでのMS-DOS用アプリケーションと異なり、WordやExcelはマウス操作を前提に作られており、コードを書かなくても図形を作ることができたり、関数による処理も簡単にできたりと、当時としては画期的なノーコードツールでした。
1990年代に入ると、ホームページビルダーやFrontPage、2000年代にはWordPress、Wixなどが現れ、それまでよりもホームページを簡単に作ることができるようになりました。
このように、プログラミングの知識がなくても誰もが簡単に目的のものを作ることができるノーコードは、現在も進化し続けており、インターネットの普及やクラウド環境などの充実により、近年さらに注目を集めています。
|ノーコードがなぜ今注目されているのか
かつてはITインフラが今ほど充実していなかったため、「使えない」という評価を受けることも多かったノーコードですが、スマートフォンの普及もあり、1億総メディア社会とも言われる現代においては、プログラミングの知識がない個人でも、アイディアさえあればサービスやサイトを気軽に作れるノーコードはうってつけのツールです。
個人だけでなく、企業にとってもノーコードはありがたい存在です。エンジニアでない従業員にもWebサービスの開発を任せることができるからです。
|DXにも貢献すると期待されているノーコード
2025年の崖という言葉が叫ばれ、DXが重要視されている今、DX推進における人材不足も深刻です。ノーコードは非エンジニアでも開発を進めることができるため、DXにおいても期待を寄せられている手法の一つです。
|ノーコードの特徴
プログラミング不要で簡単に開発ができるのがノーコードの最大の特徴ですが、WordやExcelがマウス操作を前提として作られたように、直感的な操作でイメージ通りのWebサービスやアプリを作成することができるのも大きな特徴の一つです。
また、今のノーコードツールにはWebサービスを実行する機能や環境があらかじめ用意されていることも多く、開発から公開まで短期間で行うことができます。
ノーコードのメリット / デメリット
誰でも開発ができる、便利なノーコードですが、メリットだけでなくデメリットも存在します。
|ノーコードのメリット
ノーコードのメリットとしては、すでに特徴で解説したものがほとんどですが、下記のようなメリットが挙げられます。
・プログラミングの知識がなくても開発を行うことができる
・非エンジニアにも開発を任せることができる
・既存のシステムを使うため、バグやエラーが少ない
・開発から公開までを短期間で行うことができる
・通常の開発に比べてコストダウンが可能
しかし一方で、デメリットもあるのが事実です。
|ノーコードのデメリット
ノーコードの主なデメリットは下記です。
・柔軟性のある開発が難しい
・ツール自体がサービス終了してしまう可能性がある
・セキュリティの問題
・オンプレミスで管理することが難しい
・大規模な開発には向いていない
・ツールの操作法の習得が必要
ツールに依存することによって発生するデメリットがそのままノーコードのデメリットとなります。用意されている機能を利用して開発を行うため、デザインなど細かい部分にこだわった開発は難しいですし、クラウド前提のツールがほとんどなので、オンプレミスの管理も対応できないことが多く、大規模な開発には向いていません。セキュリティもノーコードのプラットフォームに依存するため、個別の対策が難しいというのも不安の一つです。
また、ツール自体の操作方法を覚えるまでにある程度の時間を要するというのもデメリットと言えるでしょう。
ノーコードツールの紹介
多くのノーコードツールの中で、代表的なものをご紹介します。
|アプリ制作
- Bubble
2021年、アメリカで生まれたツールで、ノーコードツールと言えばBubbleというほど知名度の高いツールです。汎用性が非常に高く、Bubbleでできないことはほとんどないとも言われています。利用者が多く歴史も比較的古いため、テンプレートやプラグインも多数用意されており、拡張性も高いツールです。Web、モバイルいずれにも対応するレスポンシブWebデザインに対応。
無料プランではテスト環境のみで開発することができ、公開するには料金がかかります。有料プランは3種類あり、上位のプランは複数名の同時開発が可能です。
サポートや開発ツールの言語は英語のみとなっています。
- Appsheet
Appsheet はGoogleが提供しているノーコードツールですが、もともとは2020年1月に同社が買収したアプリ開発メーカーのツールでした。
AWSやSalesforceなど、Google以外のデータソースも使えるため、データ移行の一手間がかかりません。開発画面が英語であること、デザインが少し地味なところ、また用語がわかりづらい部分もあるので、あまり初心者にはおすすめできないツールです。
Appsheetでは、開発時点ではすべての機能が無料で利用可能ですが、サービスを公開すると料金が発生するという料金体系になっており、その際のプランは4つあります。アプリの機能やライセンス数によって料金プランが変わるので、注意が必要です。
- Adalo
Webとモバイル両方のアプリを構築できるノーコードツール。テンプレートが用意されており、データベース機能もマウスだけで構築が可能。余分な操作を極力省いた仕様となっており、簡単にアプリを構築することができます。GmailやスプレッドシートなどGoogleのサービスとも連携が可能。
無料を含めた3つのプランが用意されています。
- Amazon Honeycode
AWS(Amazon Web Services)が提供しているノーコードツールで、2020年6月24日に発表された比較的新しいツールです。
「テーブル」「ビルダー」「オートメーション」の3つからなる構成を取っており、「テーブル」はスプレッドシート形式のデータベースであり、「ビルダー」はアプリ画面をドラッグアンドドロップで直感的に組み立てることができる作成画面。「オートメーション」はデータ操作や通知の自動化を行うことができ、リマインドなどを設定できます。
Webアプリケーションとスマートフォン用のアプリケーションの画面を同時に作ることができるのも嬉しいポイント。ユーザーの権限を絞ることもできるので、複数のメンバーで開発するときも便利です。
現在、無料を含めた3つのプランが用意されています。
|ECサイト構築
- Shopify
ECサイト構築に特化したノーコードツールShopifyは、さまざまな決済手段や配送方法が利用可能です。Amazonなどの大手ECサイトとの連携にも対応しており、日本語でのサポートもしてくれます。
無料プランはなく、有料プランが3種類用意されています。
ノーコード登場により今後のIT開発はどう変わる?
|ノーコードでエンジニアが不要になる?
「ノーコードでエンジニアが不要になる」という言葉がたまに聞かれますが、そもそもノーコードツールを作っているのはエンジニアですし、ノーコードツールはエンジニアが使いこなすことでさらに便利な道具となるでしょう。
ノーコードによってエンジニアの仕事内容が変わっていくことはあり得ても、ノーコードにエンジニアの仕事が奪われるということは今後もないと考えられます。
|今後の展望
アメリカのガートナー社は2024年までに75%の大手企業がローコードやノーコードでアプリを開発するようになるとの見解を発表しています。(* 1)
*1 参照元:ガートナー、未来のアプリケーション像に関する2020年の展望を発表
また、フォレスターリサーチ社は2021年のクラウドサービス市場は前年比35%アップと見込んでおり、それに伴ってノーコード、ローコードの成長率は今後4年間で毎年28%アップするとAppDevelopMagazineは予測しています。(* 2)
*2 参照元:誰でもソフト開発「ノーコード」 米IT大手が熱視線(日本経済新聞)
参考:ローコード(Low Code)とは?
ローコードとは、ノーコードよりはコードを必要とするものの、コード量が少ないプラットフォームのこと。より詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
* 参考記事:ローコード開発とは?メリットデメリットやおすすめのツール
|ノーコードの課題
ノーコードは迅速に開発が可能な非常に便利なツールであり、災害時など急を要する場面で活躍するケースも。アメリカでは、コロナ禍において打撃を受けた地域のビジネスをサポートするサービスがいち早くBubbleによって作成されました。
小回りはきくものの、大規模なアプリ開発には向いていないことや、アプリやシステムとの連携にはプログラミングの知識が必要であることも多いため、知識のない担当者がノーコードだけですべてを完結させるというのはやはり難しく、そこが今後の課題と言えるかもしれません。
Webサービスを簡単に作れるようになればなるほど、セキュリティなど個別のカスタマイズ需要も増えてくると予想されるため、エンジニアにはノーコードにも精通することが今後はより求められていくのかもしれません。
まとめ
今後も市場規模が成長していくことが見込まれるノーコード開発。とは言え、エンジニアの仕事がなくなることはなく、ノーコードやローコードを利用する際にもエンジニアの知識が必要となる場面は多々あります。便利なツールも優秀なエンジニアも両方欲しいがコストに頭を抱える担当者さまも多いのではないでしょうか。
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