組み込み開発の基礎知識|最新動向とIoTとの関連も解説

公開日:2020/08/25 最終更新日:2023/08/04

組み込み開発の基礎知識|最新動向とIoTとの関連も解説

 

「組み込みシステム開発」とは、特定の機能を実現するために機械や装置等に組み込まれるシステム開発のことです。“特定の機能を実現する”というところで、PCなどの汎用的なシステムとは対照的です。

組み込み開発は、白物家電から電子機器、車の車載機器、工作機械など、幅広く身近にあるモノの機能を実現しています。“システム開発”というとまずWebシステムやスマートフォンアプリケーションが思い浮かぶ方が多いかと思いますが、今回はこの「組み込み開発」について、解説をします。というのも、近年ではIoT(Internet of Things)という先端技術が日増しに注目度をあげており、この分野は大きく成長をしていますが、今回取り上げる組み込み開発はIoTと非常に強い関連があります。

本記事では組み込み開発の基礎知識のほか、組み込み開発を発注する際のポイントやIoTとの関連、組み込み開発の最新事情等について取り上げます。

INDEX

1.組み込み開発とは?

2.組み込み開発の手順と成功のポイント

3.組み込み開発とIoTとの関係

4.組み込み開発の最新動向

5.御社にピッタリの開発会社をご紹介します

組み込みシステム開発とは?

組み込みシステム開発とは、特定の機能を実現するために機械や装置等に組み込まれるシステム開発のことです。“特定の機能を実現する”というところで、PCなどの汎用的なシステムとは対照的です。

この説明だと分かりにくいかと思います。例えば、PCだとソフトウェアやアプリケーションをインストールして、多様な機能をもつことができます。

一方で、家電・自動車・信号機・製造ロボットなどに組み込まれているコンピューターシステムは、特定の機能に特化しているかと思います。洗濯機なら「洗濯する」「乾燥する」であったり、車のパワーウィンドウなら「窓を開閉する」といった具合です。組み込みシステムはこのように多く場合、絞られた機能だけを実現するために開発されており、機能の拡張も想定されていないため、別途ハードウェアを必要とすることもありません。

組み込み開発の手順と成功のポイント

組み込みシステムの開発手順と、組み込み開発を成功させるために必要なポイントを解説します。組み込みシステムの開発は、開発環境と動作環境が異なるので、一般的なソフトウェア開発とは開発フローが異なるところがありますので、注意が必要です。開発環境と動作環境が異なる、ということについては④クロスデバッグで後述します。

組み込み開発はざっくりと以下の流れで進みます。

 ① 要件定義|必要機能の抽出

 ② システムの設計|ハードウェア・ソフトウェア

 ③ 実装

 ④ クロスデバッグ

 ⑤ 環境試験

 

① 要件定義|必要機能の抽出

 

ソフトウェア開発やスマートフォンアプリ開発でも同様のことですが、まずは必要な機能を洗い出すことから組み込み開発は始まります。組み込みシステムの場合、PCのソフトウェアなどと違い、リリース後にバージョンアップができません。したがって、この段階で漏れなく、念入りに機能の抽出をすることが非常に重要となってきます。

 

② システムの設計|ハードウェア・ソフトウェア

 

組み込み開発のシステム設計にあたっては、ハードウェア・ソフトウェア両方について考慮する必要があります。要件定義で抽出した機能を実現するために必要となるハードウェア・ソフトウェアの構成を決めていきます。

 

③ 実装

 

システム設計の内容を受けて、ハードウェア・ソフトウェアそれぞれ実装を進めます。ハードウェアは、回路図を基本に基板製作、部品の実装を行い、ソフトウェアはプログラム関数の実装を行います。実装が完了したら、部品の搭載がされた基板が出来上がります。

 

④ クロスデバッグ

 

実装が完了したら、デバッグ作業(バグを発見し、修正すること)に入ります。一般的なソフトウェアの開発の場合は、1台のPCで開発を行い、そのまま開発中のプログラムをそのPC上で動作させることができます(プログラムの開発をするハードウェアと、プログラムを動作させるハードウェアが同じ)。一方で、組み込み開発の場合は、プログラムの開発を行うハードウェアと実際に動作するハードウェアが別です。このようには開発環境と実行環境が異なることを、クロス開発環境といいます。

つまり、デバッグ(バグを発見し、修正すること)にあたっても、動作環境であるハードウェアで実行したものを、開発環境のハードウェアで結果を表示して、チェックする必要があるのです。このようなクロス環境でのデバッグがクロスデバッグです。クロスデバッグが完了し、問題なく動作することを確認したら、実施に基板上のプログラム領域に焼きこんで動作させることになります。

 

⑤ 環境試験

 

開発環境上では成功しても、実際に製品が利用される状況下に置かれた場合に動作しないといったことがないよう、最後に環境試験を行います。温度や湿度などがぱっと分かりやすいところですが、環境がよくない場合でも動作するよう、品質のチェックを行います。

組み込み開発とIoTとの関係

近年、IoTは急速に普及し、わたしたちの身の回りの多くのモノがインターネットと接続できるようになりました。このIoTは多くの技術を結集して開発されてますが、特に組み込み開発との関連が非常に大きいです。

 

|IoTとは

 

IoTとは“Internet of Things”の略称で、よく「モノのインターネット」ともいわれます。あらゆるモノがインターネットを介して通信することで、より安全で快適な生活を実現されたり、様々な課題解決につなげたりすることが期待されてます。

 

|組み込み開発との関連

 

IoTが組み込み開発と深い関係にあることは上述しましたが、具体的にどのように関連しているのか。

IoTが浸透することで、たとえば以下のようなことができるようになります。

 ① モノの状態をはなれた場所から把握する

 ② 遠隔でモノの操作をする

 ③ モノが状況に応じて臨機応変に稼働する

順番にみていきましょう。

 

① モノの状態をはなれた場所から把握する

 

デバイスにセンサーを組み込んで、さまざまなデータ(映像、音声、温度、振動 etc…)を知覚・検知できるようにするためには、センシングという組み込み開発の技術が用いられます。

 

② 遠隔でモノの操作をする

 

イメージが湧きやすいIoTの事例としては、家電などの操作が挙げられます。多くの場合はユーザーのスマートフォンとIoT製品とがインターネットで接続することで操作ができるようになります。これを実現するためには、スマートフォンからの指示(操作)に対して、モノの制御を組み込む必要があります。

 

③ モノが状況に応じて臨機応変に稼働する

 

組み込み開発の技術に加えて、AIが関連してきます。センサーによりさまざまなデータを収集し、それをクラウド上にビッグデータとして蓄積します。デバイスに組み込んだAIがそのビッグデータを解析することで、モノがより適切な稼働ができるようになります。

組み込み開発の最新動向

IoTがわたしたちの生活に急速に浸透していることもあり、組み込み開発の技術の重要性も高まっています。また、より利便性を高めるためにこれまで以上の機能を実装するようなニーズが急増しており、AI・機械学習、クラウド、ビッグデータといった先端技術との関わりも増え、技術も複雑化しております。

 

|Pythonでの組み込み開発

 

上述の通り、IoTはAIと深くかかわっており、AIを組み込んだユニークなIoT製品が次々と登場しています。“Python”は機械学習・AIのためのライブラリが充実しており、「機械学習やAI開発を行うならばPython」といわれるほどAI開発に向いている言語です。

組み込みシステムは使用できるCPU・メモリに制限がある場合が多く、そのため軽量かつ高速な特徴をもつC言語、C++、Javaが使用されることが一般的でしたが、実は“Python”も組み込み開発で活用することができるため、非常に人気な言語となってます。

“Python”はAIのほか、ブロックチェーンやデータ分析といった今最も勢いがある分野でも活用が目立ってきてます。学習コストが低い、開発・メンテナンスが低い、といったことからもこれから“Python”での組み込み開発が増えてくるかもしれません。

 

|IoTも含めた今後の開発需要、見込み

 

組み込み開発は、家電やそのほか業務用機器などすでに幅広い既存分野があることに加え、IoT分野での需要が急増してます。ここまで取り上げませんでしたが、新たな技術・産業として、ドローンや自動運転技術などもIoTと同様にニーズが増加することが見込まれ、より複雑な組み込みシステム開発が求められるようになっています。こうしたトレンドはしばらく止まることはないでしょう。

 

|国内エンジニアリソース問題

 

ここまで記載した通り、組み込み開発はIoT普及などの関係もあり、ますます重要度が高まってくることが予想されてます。一方で、国内のエンジニアリソースは十分ではなく、IoT開発に従事するエンジニアはもちろん、組み込み開発のエンジニアは慢性的に不足している状況です。

少し古いデータですが、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が毎年発行している『IT人材白書』の2018年版をみると、調査対象の組み込み開発企業の実に6割強が人材不足と回答しています。また、情報処理技術者試験の受験者の数字をみると、組み込み開発に従事するエンジニアの少なさが一目瞭然です。

 

<図表> IT企業の事業ごとのIT人材の“量”と“質”の不足・余剰感

 

【参考】

IT人材白書2018 Society 5.0 の主役たれ~企業・組織から、個人・チームの時代へ~

;独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

 

<図表> 令和元年度 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 業務別一覧表

 

【参考】

情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計情報

;独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

 

|オフショア開発という選択肢

 

組み込み開発は今後もさらに需要が増していくことが予想されます。一方で、さまざまな技術の登場によって、組み込み開発がより複雑化しており、開発コストの増加が非常に大きな問題となっております。

またそれ以上に深刻なのが、前項で説明した日本国内の組み込み開発エンジニアのリソース問題です。今後も継続して、課題となってくるであろう日本国内のリソース問題に対して、現時点で「オフショア開発」という選択肢を検討することをオススメします。

組み込み開発については、上流工程を日本国内で実施し、プログラミングはオフショアで開発することが以前より主流でしたが、近い将来、「オフショア開発」なしでは国内システム開発は考えられない時代がやってくることを予想する有識者は多く、今後はより一層、オフショアの活用が進むことが考えられます。

「オフショア開発」は人材が確保しやすい、ということでも検討の価値がありますが、そのほか、国内開発に比べ平均30.7%(※)のコストダウンが期待できますので、初期費用がネックで開発に躊躇されていましたら、ぜひ一度オフショア開発をご検討することをオススメします。

 

※過去、「オフショア開発. com」を利用し、オフショア開発を検討・依頼した会社132社へのアンケート実施結果より 

 * 出典:『オフショア開発白書(2021年版)

 

 * 参考記事:『オフショア開発とは?活用の目的と発注先選定のポイント

まとめ

今回は「組み込み開発」について、基礎知識、IoTとの関連、最新の動向…などについて解説しました。

「オフショア開発. com」では、厳正な審査を通過した、オフショア開発企業が多数登録しています。

IoTはもちろん、ファームウェアや制御系など様々な組み込み系システムに関するご質問・ご相談を承っております。

ご連絡をいただければ、「オフショア開発. com」無料コンシェルジュが、御社にピッタリのオフショア開発企業をご紹介いたします。まずはお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

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オフショア開発.com 編集部

日本最大級の「オフショア開発」専門の発注先選定支援サービスとして、オフショア開発に関するご相談やお問合せを日々、承っております。


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